リハログ

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はじめまして。yusukeです。柔道整復師/鍼灸師/理学療法士 3つの資格を取得。各種養成校の学生向けに「リハログ」を運営しています。30代一児の父として頑張っています。

ターミナルスタンス(terminal stance:Tst)立脚後期まとめ【歩行分析】

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ターミナルスタンスとは

ターミナルスタンス(以下Tst)とは、ミッドスタンス(以下Mst)の後に起こり、股関節伸展と共に足関節では踵が浮き上がり、いわゆる「蹴り出し」が起こる時期です。

Mstで身体重心が最も上方に持ち上がった後、Tstでは下降してくる身体重心持ち上げるために踵を浮き上がらせ、つま先立ちになることで蹴り出します。それによりフットクリアランスが保たれ反対側が適切に初期接地(以下IC)することができます。この反対側のICまでの区間をMstと言います。

このつま先立ちになり蹴り出すときに、中足指節関節を軸とします。この中足指節関節を軸とした前方へ推進をforefoot rocker機能と言い、Tstにおいて重要なイベントとなります。

 

Tstは立脚期の後半の場面になるため、「立脚後期」と言われます。

 

フォアフットロッカー(forefoot rocker)機能とは

フォアフットロッカーとは回転中心が中足趾節関節にある時をいい、Tstで起こります。

 

フォアフットロッカーはアンクルロッカーに引き続いて起こります。

 

フォアフットロッカーの機能は、制御された背屈によって、アンクルロッカー終了後も脚の前方への動きを可能にする事です。

 

これにより踵は床から離れることが可能になります。

この際、身体に最も強い駆動力が生じ、下腿三頭筋の活動も最大になります。

 

床反力の作用線が中足骨頭までくると踵が床から持ち上がります。

この際、軸は中足趾節関節となり、中足骨頭の丸い表面が回転中心となります。

 

足関節と中足趾節関節の間にある中足部は、下腿三頭筋により安定したレバーアームになります。

これがなければ踵が床から浮くことが困難です。

また、身体重心が中足趾節関節の回転中心を越えて前にくれば、身体の前方への動きの加速が生じます。

 

筋活動としては腓腹筋とヒラメ筋が最大筋力の約80%の力で、前方へ倒れていく下腿の速度を減速するように働きます。(Rohen1984.Perry1992)

この筋活動はMst時の約3倍となります。

(『観察による歩行分析』訳者月城慶一・山本澄子・江原義弘・盆子原秀三 医学書院2005年)

 

 

ターミナルスタンスの役割

ターミナルスタンスでは(以下Tst)ではMstで股関節と膝関節が鉛直配列に近づき身体重心が最も上方に持ち上がった後、「①前方へ加速する身体重心にブレーキをかける」「②下降してくる身体重心を上方修正する」「③重心軌道の方向をコントロールする」の3つの役割があります。

 

Tstではankle rockerにより加速した推進力に対して適切にブレーキをかけることと、徐々に下降してくる身体重心を持ち上げるためにforefoot rockerによる蹴り出しが重要になります。またこの蹴り出しは方向転換で重要な機能となります。

ankle rockerは足部の向いた方向にしか回転できないため、forefoot rockerによる蹴り出しで方向転換する必要があります。

高齢者では蹴り出しが消失している場合が多いため、方向転換がスムーズにできません。方向転換時に転倒リスクが高いのはこれが一つの原因です。

 

Tst時の下肢のアライメントは股関節伸展20°、膝関節屈曲5°、足関節背屈10°、距骨下関節外反位(Mstよりさらに減少)です。

 

Mstとの違いは股関節が最大伸展位になることと、蹴り出し(forefoot rocker機能)のため足関節背屈が強まることです。

 

歩行のそれぞれの場面は、実は連続しています。

そのためそれぞれの場面でのアライメントには理由があります。

 

なので場面ごとに記憶するのではなく、ストーリーで理解していく必要があります。

 

なぜTstではこの肢位をとるのか

【股関節】

まず股関節伸展20°について考えていきます。

Mstで0°中間位だった股関節は、Tstで20°まで伸展されます。

これをtraling limb(トレイリングリム)といい、体幹の重心が足部の作る支持基底面から大きく離れるために股関節の過伸展が起こることを指します。

 

股関節の後方を通る床反力ベクトルは強力な股関節伸展モーメントを生み、それは大腿筋膜張筋によって制御されます。

同時に腸腰筋は引き伸ばされるとともに遠心性収縮して重心の前方移動にブレーキをかけます。

(この遠心性収縮はバネのようにエネルギーを蓄えて、遊脚期になると開放され急激に求心性収縮することで振り出しのエネルギーとなります。)」

また前額面上の安定のために小殿筋、大腿筋膜張筋が活動します。

※簡単に時期ごとの筋活動をまとめると、「IC・LR大殿筋」「Mst→中殿筋」「Tst→大腿筋膜長筋・小殿筋」がポイントとなります。

 

【膝関節】

膝関節はMstに引き続き屈曲5°とほぼ伸展位のままです。

下腿三頭筋の最大収縮によりMstから続く下腿の前傾にブレーキをかけていくことにより、膝関節を安定させます。膝関節周囲では特に筋活動は必要としません。

 

【足関節】

足関節はMstの5°からTstでは10°まで背屈します。

forefoot rocker機能により蹴り出すために、下腿三頭筋が最大に収縮し踵を持ち上げます。

これにより反対側の歩幅を大きくします。

下腿三頭筋はMstでは遠心性収縮によりankle rockerの前方推進を制御し、Tstでは動的安定性を保持する等尺性収縮にスムーズに移行しforefoot rockerを可能とする。

(※最後はPswで残存的な力による求心性収縮が発生する。)

 

【距骨下関節】

距骨下関節ではMstよりさらに外反が減少する。

そのために内反筋群(ヒラメ筋・後脛骨筋・長趾伸筋・長母趾伸筋)が活動する。

 

まとめ

Tstでは前方へ加速する身体重心にブレーキをかけることと、下降してくる身体重心を上方修正し、推進する方向をコントロールすることが重要となります。

 

股関節20°伸展位は股関節伸展モーメントにより起こり、大腿筋膜張筋により制御されます。前額面上では小殿筋と大腿筋膜張筋が制御します。

膝関節5°屈曲位はMstから引き続きほぼ伸展位を維持します。筋活動は必要ありません。

足関節10°背屈位は蹴り出しによりおこります。この際、下腿三頭筋の最大筋収縮がおこり踵を持ち上げます。

これがいわゆるforefoot rocker機能であり、身体重心の上方修正と、推進方向のコントロールを可能とします。

 

重要なTstの機能をこの機会にぜひ整理してみてください。

 

【参考文献】

1)キルステン・ゲッツ=ノイマン(著),月城慶一,他(翻訳):観察による歩行分析.医学書院,2008.

2)石井慎一郎:動作分析 臨床活用講座 バイオメカニクスに基づく臨床推論の実践,メジカルビュー社,2016.

ミッドスタンス(mid stance:Mst)立脚中期まとめ【歩行分析】

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ミッドスタンスとは

ミッドスタンス(以下Mst)とは、ローディングレスポンス(以下LR)の後に起こり、膝関節・股関節が鉛直配列に近づき身体重心が最も上方に持ち上がる時期です。

LRで足底前面が地面に接し、下腿が前方に傾いてくるのを制御することが重要な時期となり、傾きが最大になり踵が浮くまでを言います。

この足関節の制御をankle rocker機能と言い、Mstにおいて重要なイベントとなります。

 

Mstは立脚期の前半と後半の中間の場面になるため、「立脚中期」と言われます。

 

 

アンクルロッカー(ankle rocker)機能とは

アンクルロッカーとは回転中心が足関節にある時をいい、Mstで起こります。

 

具体的にはヒールロッカーの後に起こる下腿三頭筋によって制御される足関節背屈のことです。

 

床反力の作用線はこの相で足関節の前方へ移動していき、それにより足関節背屈方向のモーメントが発生し増加していきます。

この際、軸は足関節で、足底が床に接した時点から足関節は回転中心となります。(Mstで足全体は床に固定されます。)

 

筋の活動としてはヒラメ筋が下腿の前方への動きを安定させ、腓腹筋とともに遠心性収縮によって足の制御された背屈を生じさせます。

下腿三頭筋の機能はMstでの立脚安定に欠かせません。

(『観察による歩行分析』訳者月城慶一・山本澄子・江原義弘・盆子原秀三 医学書院2005年)

 

 

ミッドスタンスの役割

ミッドスタンスでは(以下Mst)ではLRで足底前面が地面に接地したあと、「①下腿の前傾を制御」し「②安定した立脚を維持」しつつ「③身体重心を上方に持ち上げる」という3つの役割があります。

 

この役割を達成することにより、下腿の前傾(ankle rocker機能)の前半では前方への推進力が加速していき、後半ではその加速を制御しブレーキをかけていくことで、スムーズな前方への推進が可能となります。

 

Mst時の下肢のアライメントは、股関節屈曲0°、膝関節屈曲5°、足関節背屈5°、距骨下関節外反位(LRより減少)です。

 

LRとの違いは膝関節・股関節が伸展位になっていくことと、下腿が前傾していく(ankle rocker機能)ため足関節背屈位になることです。

 

IC・LRでの股関節屈曲20°は、Mstで伸展され0°となります。またLRで衝撃吸収のために屈曲した膝関節はほぼ伸展位(屈曲5°)となります。

 

歩行のそれぞれの場面は、実は連続しています。

そのためそれぞれの場面でのアライメントには理由があります。

 

なので場面ごとに記憶するのではなく、ストーリーで理解していく必要があります。

 

なぜMstではこの肢位をとるのか

【股関節】

まず股関節0°中間位について考えていきます。

IC・LRで20°屈曲位で維持されていたのが、この時期に伸展され0°中間位となります。

同時に股関節と膝関節はほぼ鉛直に配列され、身体重心が上方に持ち上がります。

 

このとき股関節周囲の筋活動は必要なく、反対側の振り出しの勢いと股関節の床反力ベクトルが股関節の後方を通ることによる伸展モーメントにより受動的に伸展します。

 

さらに矢状面では中間位ですが、前額面では骨盤の4°の側方傾斜が起こります。すなわち股関節が4°内転します。

これを制御するのは、外転筋群であり、この外転筋力が足りないとトレンデレンブルグ徴候が起こります。

また、外転筋群と同様に重要なのが大内転筋です。

この大内転筋は骨盤を膝関節上に配列する作用があり、殿筋群により骨盤の側方安定化が図られている時に、膝関節の位置を制御します。

 

このように股関節では矢状面と前額面の両方で重要な働きがあります。Mstでは矢状面では受動的な伸展が起こり身体重心を上方に持ち上げつつ、前額面では荷重が乗ってくるために外側に動揺する骨盤を制御する必要があります。

 

【膝関節】

膝関節はこの時期に屈曲5°とほぼ伸展位になります。

LRで屈曲して衝撃吸収に働いた膝関節は、股関節と同様に反対側の振り出しの勢いと股関節の床反力ベクトルが膝関節の前方を通ることによる伸展モーメントにより受動的に伸展します。

ただしMstの前半では大腿四頭筋により膝関節を安定させる必要があり、床反力ベクトルが膝関節の前方を通った時点で大腿四頭筋の活動は停止します。

 

【足関節】

足関節はこの時期に5°背屈位となります。

これはLRで足底全面が地面に接地した後、下腿がさらに前傾してくるためです。

そのためLRでの5°底屈は、Mstで5°背屈となります。これをankle rockerといいます。

これにより前方への勢いは維持されます。

 

ただし、この前傾が行き過ぎないように制御も必要となります。

そこで重要になるのが下腿三頭筋の遠心性収縮です。この制御により下腿とその上の大腿の前方加速は制御され安定した、膝関節伸展が可能となります。

 

【距骨下関節】

距骨下関節はこの時期に外反を減少させます。

LRで外反位となり下腿を内旋させて膝関節を安定させていましたが、身体重心の外側への移動と、下腿三頭筋の強い収縮で内反方向のモーメントが発生し外反を減少させます

 

まとめ

Mstでは下腿の前傾を制御し安定した立脚を維持することと、身体重心を上方に持ち上げることが重要となります。

 

股関節中間位は反対側の振り出しと股関節伸展モーメントにより受動的に起こります。

前額面では外転筋群と大内転筋により骨盤の外側移動の制動と、膝関節の安定がなされ荷重が乗ってくる下肢を制御し安定した立脚を可能にします。

膝関節5°屈曲位はほぼ伸展位であり、反対側の振り出しと膝関節伸展モーメントにより受動的に起こります。ただし前半では大腿四頭筋による膝関節安定化が必要になります。

足関節5°背屈位はLRでの5°底屈位から下腿が前傾した結果であり、下腿三頭筋の制御が必須になります。これにより下腿・大腿の受動的伸展を制御し安定した立脚が可能となります。これがいわゆるankle rocker機能であり、前方への推進力を適切にコントロールするメカニズムです。

 

重要なMstの機能をこの機会にぜひ整理してみてください。

 

【参考文献】

1)キルステン・ゲッツ=ノイマン(著),月城慶一,他(翻訳):観察による歩行分析.医学書院,2008.

2)石井慎一郎:動作分析 臨床活用講座 バイオメカニクスに基づく臨床推論の実践,メジカルビュー社,2016.

ローディングレスポンス(loading response:LR)荷重応答期まとめ【歩行分析】

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ローディングレスポンスとは

ローディングレスポンス(以下LR)とは、イニシャルコンタクト(以下IC)の直後から始まり反対側の足部が地面から離れるまでの場面を言います。

わかりやすく言えば、LRとは踵が地面についた瞬間から足底の全面が地面に接地するまでの、衝撃を吸収する時期となります。

 

また、衝撃吸収や前方推進のメカニズムとして「heelrocker」という機能がありLRでの重要なイベントとなります。

 

これらの特徴から、この時期は「荷重応答期」と言われます。

 

 

ヒールロッカー(heelrocker)機能とは

ヒールロッカーとは回転中心が床と踵の接点にある時をいい、ICからLRで起こります。

 

荷重受け継ぎの際、前方へ落ちていく身体重量によって生じる勢いは、ヒールロッカーの機能により受け止められます。

その力を利用し、ヒールロッカーの機能は、下肢全体を前方へ移動させます。

この前方移動とは、足関節の中間位付近までのことであり、踵接地から足底接地するまでの動きとなります。

次のアンクルロッカーで足関節の中間位より前方に移動します。

 

ヒールロッカーでは、床反力の作用線がICとLRの期間、足関節の後方を通過します。

それにより足関節底屈方向のモーメントが発生し、その回転中心を踵骨隆起の丸い表面が担います。

 

身体はターミナルスイングの終わりで1cmの高さから自由落下し、床へ向かう力の大部分が前方への勢いに変換されます。この機能は衝撃の緩衝にも貢献します。

 

筋の活動としては、前脛骨筋の遠心性収縮が足の「落下」に対しブレーキをかけます。

この筋収縮により下腿は前方へ引っ張られ、膝関節は約15°屈曲します。この時、膝関節屈曲を制御するために大腿四頭筋も遠心性収縮し、前方に倒れていく下腿に大腿を近づけていきます。(Tittel1985,Inman1981,Perry1992)

これにより下肢全体を前方に移動することが可能となります。

(『観察による歩行分析』訳者月城慶一・山本澄子・江原義弘・盆子原秀三 医学書院2005年)

 

 

ローディングレスポンスの役割

ローディングレスポンス(以下LR)では踵接地で衝撃に耐えたあと、「①その衝撃を吸収」し「②スムーズに前方への推進を促す」という2つの役割があります。

 

この時の下肢のアライメントは、股関節屈曲20°、膝関節屈曲15~20°、足関節底屈5°、距骨下関節外反位です。

 

踵接地との違いは膝関節屈曲と足関節底屈です。

この時期の膝屈曲は、いわゆるダブルニーアクション(double knee action)の一回目の屈曲です。

 

またこの足関節底屈はheelrocker機能により起こります。

 

歩行のそれぞれの場面は連続しています。

そのため場面ごとのアライメントは前後の関係を考えて、はじめて理解できます。

 

なので場面ごとに記憶するのではなく、ストーリーで理解していく必要があります。

 

ダブルニーアクション(二重膝作用)とは

支持脚は膝関節を完全伸展位で踵接地して「立脚相」になり、膝関節を足底接地まで屈曲していき、「立脚中期」の後、体重が支持脚に完全に加わる時期にふたたび伸展し、踵離地と同時に屈曲を始める。

このような膝関節の伸展-屈曲-伸展-屈曲の運動を二重膝作用(double knee action)という。

踵接地の衝撃の軽減と上下の重心移動の振幅減少に役立つ。

(『基礎運動学第6版』著者中村隆一・斎藤宏・長崎浩 医歯薬出版株式会社2009)

 

なぜLRではこの肢位をとるのか

【股関節】

まず股関節20°屈曲位から考えていきます。

これはイニシャルコンタクト(以下IC)の肢位の継続です。

ICに引き続き屈曲位を維持するために、大殿筋の収縮が重要になってきます。

またハムストリングスも引き続き収縮し、仙腸関節を安定させます。

 

またICでは正中にあった重心が、立脚肢に移動してくるため、股関節内転筋・外転筋の収縮も起こります。

 

またheelrocker機能により、相対的に股関節は伸展していくため、徐々に大殿筋やハムストリングスの収縮は弱まり、そのかわりに大腿四頭筋が収縮してきます。

この大腿四頭筋の収縮は非常に重要で大腿骨を前方へ引き寄せ、骨盤と体幹の勢いで股関節の伸展力を高めます。

 

【膝関節】

膝関節はこの時期に15~20°屈曲してきます。

この膝関節屈曲は衝撃吸収に最も重要な役割をしています。

そしてこの膝関節屈曲はheelrocker機能と連動して起こります。heelrocker機能により足底が地面に近づく底屈モーメントを前脛骨筋の遠心性収縮で制御します。これにより下腿が前傾していくため膝関節には屈曲のモーメントがかかってきます。

この強力な屈曲モーメントを制御するのが大腿四頭筋の遠心性収縮です。

この制御下での膝関節の15~20°屈曲は結果的に衝撃吸収の要となります。

 

しかし、ここで問題が一つ生じます。

ICでは完全伸展位(あるいは5°屈曲)で安定していた膝関節が、屈曲位となることで不安定となります。

ここで重要となるのが大殿筋です。大殿筋は股関節屈曲モーメントを制御し、結果的に股関節伸展力を生みます、これが大腿骨遠位端を脛骨に押し付けて膝関節を安定化させます。

 

またこの大殿筋の収縮は股関節外旋にも作用し、大腿骨を外旋させます。

それに対し距骨下関節は外反するため、下腿は内旋するという運動連鎖が起こります。

これにより前十字靭帯(ACL)と後十字靭帯(PCL)が交差を強めることになり、膝関節がより安定します。

 

【足関節】

足関節はこの時期に5°底屈してきます。

これは踵接地直後に足関節底屈モーメントが発生するため、それを足関節背屈筋群(前脛骨筋、長趾伸筋、長母指伸筋)の遠心性収縮により制御する過程で生じます。

またこの足関節背屈筋群の遠心性収縮は下腿を前傾させます。

これにより膝関節屈曲が生じて、衝撃を吸収することができます。

 

またこれらのいわゆるheelrocker機能により、衝撃吸収するとともに、前方への推進力も生まれます。

下腿の前傾は最終的に腓腹筋とヒラメ筋により制御され、次の立脚中期のankle rocker機能を働かせる準備をします。

 

【距骨下関節】

距骨下関節は外反します。

膝関節のところで書いたように、下腿の内旋を生み、膝関節の安定化に関わります。

 

まとめ

LRではICで生じた衝撃を吸収することと、heel rocker機能によりスムーズに前方への推進を促すことが重要となります。

 

股関節屈曲位はICからの延長で生じており、前方に崩れるのを防ぐために大殿筋の収縮が必要になってきます。

膝関節屈曲位は衝撃吸収で最も重要となり、heel rocker機能と連動して起こります。

この膝関節屈曲の制御のために大腿四頭筋の収縮が重要になります。

足関節底屈位は前脛骨筋により制御され、同時に下腿前傾が起こります。

これがいわゆるheel rocker機能であり、この下腿前傾により膝関節屈曲が誘発されます。

この一連の動作により衝撃吸収だけではなく、前方への推進を促します。

 

重要なLRの機能をこの機会にぜひ整理してみてください。

 

【参考文献】

1)キルステン・ゲッツ=ノイマン(著),月城慶一,他(翻訳):観察による歩行分析.医学書院,2008.

2)石井慎一郎:動作分析 臨床活用講座 バイオメカニクスに基づく臨床推論の実践,メジカルビュー社,2016.

イニシャルコンタクト(initial contact:IC)初期接地まとめ【歩行分析】

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イニシャルコンタクトとは

イニシャルコンタクト(以下IC)とは、歩行の最初に踵が地面に接する場面を言います。

つまりICとは歩くために振り出した足が地面に「初期接地(イニシャルコンタクト)する瞬間」ということです。

 

歩行観察では、ここを歩行周期のスタートとしています。

歩行周期とは立脚期(支えてる時期)と遊脚期(振り出している時期)からなり、ICはこの立脚期の始まりの場面となります。

 

このICですが、昔は「踵接地」と言われていました。

しかし、必ずしも踵から接地できる人ばかりではないため、現在、歩行分析で主流となっているランチョ・ロス・アミーゴ式ではIC(初期接地)と表現されています。

(ランチョ・ロス・アミーゴ式とは臨床歩行分析のメッカと言われるロサンゼルスのランチョ・ロス・アミーゴ国立リハビリテーションセンターで考えられた方法です。)

 

 

イニシャルコンタクトの役割

イニシャルコンタクト(以下IC)では2cmもの重心の落下があると言われています。

 

そのため、落下の衝撃に耐えるためのアライメントを作らなければいけません。

また、このアライメントがその後の立脚期の安定や前方への推進力に影響するため、ICでしっかりと下肢のポジションを作ることも重要となってきます。

 

つまりICの場面で求められる機能は、「①踵接地の衝撃に耐えること」と、「②下肢のアライメントを保つこと」の2つとなります。

 

このときの下肢のアライメントは、股関節屈曲20°、膝関節屈曲0~5°(ほぼ完全伸展位)、足関節中間位、距骨下関節外反位です。

 

なぜこのような肢位をとるのでしょうか。

そしてそれがなぜ衝撃に耐えるために有利なのでしょうか。

 

歩行のそれぞれの場面は連続しています。

そのため場面ごとのアライメントは前後の関係を考えて、はじめて理解できます。

 

なので場面ごとに記憶するのではなく、ストーリーで理解していく必要があります。

 

なぜICではこの肢位をとるのか

【股関節】

まず股関節20°屈曲位から考えていきます。

ICは遊脚期から立脚期に切り替わる瞬間ともいえます。

 

そのため遊脚期での下肢の振り出し(Tsw)で作った20°屈曲位がそのまま保持されていることになります。

 

この時、振り出し(股関節の屈曲モーメント)を制御するために大殿筋とハムストリングスが活動します。

特にこの大殿筋の収縮は重要で、屈曲モーメントにより体幹・股関節が前方に崩れていくのを制御する役割があります。

 

また踵接地の瞬間、腸骨は後傾するため仙結節靭帯と骨間靭帯の張力を高めて仙腸関節の安定に作用するのですが、その際ハムストリングスの収縮がさらにそれを強固にする役割があります。

 

なのでこの股関節屈曲20°で大殿筋・ハムストリングスが収縮している状態は、衝撃に耐えるために有利であるとともに、アライメントを維持するためにも重要だと言えます。

 

またこの屈曲20°という肢位は、地面への垂直の力が、振り出しによる下肢を前に滑らせてしまう方向の力より大きくなるため安定すると言われています。

 

歩幅が小さければ下肢を前に滑らせる力が少なくなるため、安定しますが歩行による推進力も少なくなってしまいます。(高齢者でよくみられます。)

 

そのため健常者の大きな振り出しでは、この理想的な股関節屈曲と大殿筋・ハムストリングスの収縮による安定が重要となってきます。

 

【膝関節】

膝関節はこの時期にほぼ完全伸展位をとります。

膝関節も股関節と同様に振り出しから連続し、遊脚期の最後(Tsw)には膝から下が振り子のように振り出されるのでほぼ完全伸展位となります。

 

膝関節伸展位は、膝関節周囲の靭帯の緊張が高まる「締まりの位置」なので、踵接地の衝撃に耐えることができます。

また、股関節屈曲と膝関節伸展のアライメントでは体重ベクトルが、膝関節軸の前方を通ることになます。これにより膝関節伸展方向のモーメントが発生し安定性の高い状態になります。

 

この際、この膝関節伸展を維持するために大腿四頭筋の収縮や大殿筋上部線維による腸脛靭帯の緊張が起こり、膝折れを防ぎます。

さらに反張膝を防ぐためにハムストリングスの活動も必要となります。

 

つまり膝関節のアライメントを制御するために、膝関節前面・後面両方の筋群の活動が必要になり、前面ではより強い活動が必要になると言えます。

 

【足関節】

足関節はこの時期に中間位をとります。

この「中間位で踵接地する」ということは、足部の安定性に重要な意味を持ちます。

足関節背屈位では、距骨関節面の広い部分が脛骨と腓骨の間にはまり込むため「締まりの位置」となって足関節の可動は制限されます。

さらに中間位では足関節の適合性が最も高くなると言われるため衝撃に耐えるために有利となります。

 

またこの肢位はICの後に続く、ローディングレスポンス(LR)で重要になります。この時に起こるheelrocker機能のためのポジショニングとして、足関節中間位が適切な位置となるためです。

 

これらの理由で、足関節を中間位に保ち踵接地するのが理想的ですが、そのためには前脛骨筋、長指伸筋、長母指伸筋の活動が必要になります。

 

【距骨下関節】

また衝撃に耐えるために距骨下関節は外反し、その影響で膝関節は内旋します。

この下腿の内旋は、股関節屈曲位での制御に必要な大殿筋の活動が大腿骨を外旋させるのに対して、距骨下関節は外反し下腿を内旋させるため運動連鎖により起こります。

 

これにより前十字靭帯(ACL)と後十字靭帯(PCL)が交差を強めることになり、膝関節がより安定します。

 

まとめ

ICでは衝撃に耐えることと、後のheelrocker機能を効率よく働かせるための下肢のポジショニングが重要になります。

 

股関節屈曲位は仙腸関節と膝関節の安定に関わり大殿筋・ハムストリングスにより制御されます。

膝関節伸展位と下腿内旋位は靭帯による受動的な安定性をもたらします。また大腿四頭筋や大殿筋上部の活動により膝折れを防ぎ、ハムストリングスにより反張膝を防ぎます。

足関節中間位は距腿関節のはまり込みによる安定化と、heelrocker機能の準備につながります。このために前脛骨筋などの足関節伸展筋の活動が重要になります。

 

これらにより衝撃吸収と下肢のポジショニングが達成されます。

 

重要なICの機能をこの機会にぜひ整理してみてください。

 

【参考文献】

1)キルステン・ゲッツ=ノイマン(著),月城慶一,他(翻訳):観察による歩行分析.医学書院,2008.

2)石井慎一郎:動作分析 臨床活用講座 バイオメカニクスに基づく臨床推論の実践,メジカルビュー社,2016.

【理学療法士】急性期に実習にいく学生さんへ。脳梗塞急性期のリスク管理の概要まとめ。

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脳梗塞の急性期ではリスク管理がまず重要になります。

特に超急性期では多くの患者さんでは意識障害があり、コミュニケーションが十分にとれません。

その中で、患者さん状態を把握するためにはバイタルの内容を理解することが重要となってきます。

その上でリハを実施するかどうかの判断をしていくことになります。

 

今回は脳梗塞後に把握しておかなければならないバイタルサインについて、概要レベルですがまとめます。

 

 

 

バイタルサインとは

バイタルサインとは「生命徴候」のことで、客観的に状態を数値化できる血圧、脈拍、呼吸、体温のことを言います。

急性期の環境では場合によってはモニターで管理されていたりする場合もあり、主に看護師さんが管理されています。

 

しかし、理学療法士にとってもバイタルサインは重要な指標になります。

なぜなら離床を含めたリハビリのすべては多かれ少なかれ身体に負荷をかけるものであり、身体状況が変動するからです。

 

つまり、身体状況を把握することはリハビリを安全に進める上でまず最低限必要になってきます。これを管理することが患者さんに最適なリハを実施する第一歩になるのです。 

 

しかし、この管理や判断が、とても難しいことに気づいたのは臨床に出てからです。

なぜなら学生時代はanderson・土肥の基準や、リハ安全ガイドラインの中止基準などを目安にして、基準内なのか基準外なのかで判断することが許されました。

 

しかし臨床ではこのような基準で判断することはありません。

 

臨床では基準はあくまで目安にすぎず、医師の指示の把握や、医学的管理の状況を理解した上での個別のリスク管理が求められます。

 

そのためバイタルサインの数値そのものより、なぜその数値になっているのか病態の把握が重要になってきます。

 

つまりバイタルサイン単体で把握するのではなく、脳画像や血液データなどの基本的情報や看護記録による状態の変化と一緒に数値を解釈していく必要があります。

また、実際にリハを実施するかどうか判断するには患者さんをみて著変がないかを確認することが重要です。

 

バイタルサインはあくまでひとつの情報に過ぎないということがポイントです。

 

ではバイタルサインの各項目は、脳梗塞後の管理ではどのような意味を持つのか考えてみます。

 

血圧(BP)はなぜ測るの?

血圧の正常値は収縮期100~129mmHg、拡張期80~84mmHgです。

収縮期130~139mmHg、拡張期85~89mmHgは正常高血圧といわれ高血圧になりかけている状態に分類され、それ以上は「高血圧」になります。

 

また収縮期100mmHg以下、拡張期60mmHg以下は「低血圧」に分類されます。

しかし、これはあくまでこの正常血圧(あるいは至適血圧:収縮期120mmHg、拡張期80mmHg)を越えると全身の血管病変である脳卒中心筋梗塞、腎疾患などのリスクが上がるという目安に過ぎません。

 

そのため、脳卒中後の血圧管理ではこの正常値の理解では対応しきれません。

実際容易にこの数値を越え、医師の指示をもとに個人ごとに管理して理学療法を進める必要があります。

 

また脳卒中といっても、じつは一般的に脳梗塞脳出血では管理に違いがあります。

脳梗塞では200±15mmHg程度まで降圧せず、高めで維持します。

それに対して脳出血では160~180mmHg程度で降圧療法を積極的に行うという特徴があります。

これはなぜかというと、脳出血の場合は降圧する方が、血腫の増大を抑制できるためです。 

 

なので脳梗塞ではかなり高い血圧で管理する場合も多く、その状態でリハ実施の判断をしなければいけません。

 

といっても先ほどの中止基準の話と一緒で、臨床では個別の判断が必要になってくるため、医師の指示を確認しながら進めていかなければいけません。

この数値に当てはめてすべてのケースを管理できるようなものではないということが重要です。

 

高すぎる場合は投薬による降圧が行われる場合が多く、医師が指定した範囲内で管理し、場合によっては医師にリハ実施の相談をする必要があります。

 

でもじつは血圧管理で重要なのは、リハ実施中の「血圧低下の管理」です。

 

脳梗塞の急性期では「脳血流自動調節能」が機能しなくなります。これがリハを進める上で梗塞巣を拡大してしまう原因になりうるのです。

 

この「脳血流自動調節能」とは、全身の血圧が変動してもそれに影響されず、脳の血流を常に一定に保つ機能です。

(健常者では平均血圧60~159mmHgの範囲で機能します。ちなみに平均血圧拡張期血圧+(収縮期血圧拡張期血圧)÷3で求めることができます。)

 

脳卒中の急性期では、この機能が病巣とその周辺部(ペナンブラ)で障害されます。

そのため全身の血圧変動に脳血流が影響されるようになってしまいます。

 

これがリハビリ時になぜ重要かというと、離床を進めていく際必ず体位変換を伴うため血圧変動が起きる場面があるからです。

例えば起居動作、ギャッジ座位、端座位、移乗、車椅子座位、立位とすべての段階で体位変換を伴います。

このすべての場面で起立性低血圧の原理が働き、血圧が変動しやすくなります。

 

脳血流自動調節能が破綻している状態では、起立性低血圧=脳虚血になってしまいます。

 

そして脳虚血になるとなぜいけないかというと、病巣周辺のペナンブラが梗塞となってしまい結果的に脳梗塞を拡大することになってしまいます。

 

 つまり脳虚血になっていないか確認するために、安定してない時期は血圧管理が重要になってきます。

 

どんな時に血圧低下するの?

血圧が低下する場面として、体位変換時あるいは体位変換した後が考えられます。

つまり臥位(ベッドで寝ている状態)からギャッジ座位や端座位、立位になるときです。

 

このときに重力の影響により「起立性低血圧(脳虚血)」が起こるリスクがあります。

特に脳梗塞後では脳の血流調節だけでなく、自律神経のバランスも崩れているため全身の血流調節にも影響を及ぼし、より起立性低血圧のリスクが高まっています。

 

 脳循環自動調節能の破綻は主幹動脈の梗塞では30~40日続き、分枝の梗塞でも2週間程度続きます。ラクナ梗塞でも4日、TIAでも半日程度は影響を受けるといわれています。また脳幹部の梗塞では重篤なため100日を越える場合もあります。

 

この期間は前後の数日の管理状況をみて状態が安定しているか確認しながらリハを進める必要があります。

 

起立性低血圧(脳虚血)ではどんな自覚症状があるの? 

リスク管理する上で、自覚症状とバイタルサインを合わせてチェックしておくことが重要です。また経過を追うことも重要です。

 

では、この起立性低血圧時(脳虚血時)ではどのような自覚症状があるのでしょうか。

 

たとえば目の前が霞んだり、頭がぼーっとしたりするなど健常者でもよく経験するような症状のほかに、吐き気や冷や汗、発語が少なくなったり、反応が乏しくなるなどの症状がみられる場合があります。

 

バイタル管理とともに自覚症状の有無も確認可能であればチェックする必要があります。

とはいえ急性期では意識障害が強い例も多く、必ずしも確認できない場合もあることに注意が必要です。

 

脈拍(HR、PR)はなぜ測るの?

正常値は60~100回/分です。60回/分以下が徐脈、100回/分以上は頻脈となります。

 

脳梗塞に限らず脳卒中では中枢神経が障害されることで自律神経のバランスが崩れます。そのためストレスで交感神経が過剰に反応してしまったり、体内のカテコルアミンの濃度が高まったりします。

 

この結果、不整脈や頻脈になりやすい傾向があります。

 

またこの不整脈、頻脈または徐脈がある場合、循環血液量の低下につながるため起立性低血圧が起きやすくなります。

 

また、脳梗塞は心房細動による心原性脳塞栓症の場合など、不整脈と密接に関係していることがあります。重篤不整脈のリスクがある場合は、モニター心電図で管理されているのでその把握も重要になってきます。

 

また脈を触れて不整脈の有無や変化を同時に確認することも重要です。

 

そして、多くの不整脈の中で最も危険なものを特に把握しておかないといけません。

それは心室頻拍(VT)、心室細動(VF)です。こうなってしまうと有効な心拍出は難しくなり意識は消失してしまうため、すぐにBLSを実施し、医師による除細動が必要となります。

現状の不整脈は、これらにつながる可能性があると判断されているのか、医学的管理の状況からリスクの程度を知っておくことが重要です。

 

そして、脈拍も血圧の管理と同じように、患者さんの状態をみながら管理することが大切です。

バイタルサインはその瞬間の数値の変化より、今までの経過やその数値の背景を把握しておき、患者さんのリスクを予め予測しておくことに意味があります。

 

例えば140を超えるような頻脈ではVFとなる場合があるため、リスクを予め把握したうえで、あまりに変化が大きい場合はリハを中止し医師に相談する必要があります。

 

徐脈も同様に自覚症状をみながら管理し、40以下となるような場合は心停止や意識消失を伴う場合があるので、同様に考えます。

 

いずれにしても臨床では血圧と同様に、医師の指定した範囲内で管理することが基本になります。

 

起立性低血圧(脳虚血)が起きやすい状態とは

起立性低血圧(脳虚血)のリスク管理には先ほど書いたように血圧と脈拍の管理が重要です。

 

脳梗塞では起立性低血圧が起きやすいことは書きましたが、どのような患者さんでリスクが高くなるのでしょうか。

 

起立性低血圧は自律神経が障害されて起きやすくなるため、梗塞巣が大きい場合や脳幹部に梗塞巣がある場合、その他多発性や再梗塞の場合でリスクが高くなります。

それに加えて廃用が進んでも全身の循環調節が悪くなるため、離床が遅れた場合や発症前の活動性が低い場合などでも起こりやすくなります。

 

加えて循環血液量が低下している場合でも起きやすくなるため透析患者さんや脱水、不整脈や頻脈、徐脈を呈している場合などでもリスクは高くなります。

 

これらの条件を持っている場合、血圧の変動には注意して介入しなければいけません。

 

頭蓋内圧亢進症状について

脳卒中急性期では、頭蓋内圧亢進症状にも注意が必要です。

これは例えば脳梗塞による脳浮腫や脳出血による血腫などで、頭蓋内が押し狭められ内圧が上がってしまう状態です。

 

頭蓋内は脳実質、脳脊髄液、血腫により内圧が決定します。

 

そのため主にCT画像で損傷程度や場所、midlinshift、左右の脳溝の変化などを確認しておき、リスクを予測しておくことが重要です。

それに加えて、左右の瞳孔不同の有無やCushing症候群の有無を確認する必要があります。

Cushing症候群とは徐脈でありながら血圧が上がる状態のことをいい、血圧と脈拍を管理する際知っておく必要があります。

 

またこの判断も患者さんの状態を確認することが重要で、突然の嘔吐や頭痛などに注意が必要です。(頭痛・嘔吐・うっ血乳頭が三大徴候です。うっ血乳頭は網膜中心静脈の変化なのでセラピストでは確認できないため、延髄の刺激による突然の嘔吐などが重要な所見になります。)

 

この頭蓋内圧亢進が進むと、脳は大後頭孔を越え脊髄側にまで落ち込んでしまい「脳ヘルニア」となり、最悪脳幹を刺激して生命維持ができなくなります。

 

学生時代に延髄の循環中枢・呼吸中枢・嘔吐中枢・嚥下中枢・唾液中枢・咳中枢などを暗記しましたが、脳ヘルニアに至るとこれらの障害から血圧低下や自発呼吸の停止などが起こります。

 

医師・看護師による管理は常に行われていますが、理学療法士としても介入する際にはリスクを把握しておく必要があります。

 

体温はなぜ測るの?

急性期の場面では発熱がみられることもよくあります。

一般的には38度以上ではリハを実施しないとされています。

発熱は酸素消費量の増加につながり「中枢神経障害の増悪の可能性」があるといわれています。

その機序としては代謝障害や神経伝達物質放出の増加、フリーラジカル賛成の増加などが考えられており、高体温は予後不良につながるとされています。

 

そのため、38度を超える体温では医師との相談により進めていく必要があります。

 

またこの発熱が何から生じているのかの把握も重要です。誤嚥リスクがあったりして炎症反応の値が高い患者さんでは微熱が続いているようなことも多々あります。

こういった場合、状況によっては離床して換気を上げてあげることが有効な場合もあり、単に発熱があるから中止と安易に考えないことが大切です。

 

発熱は炎症との関わりも強く血液データや胸部の画像診断がはいってないかなど合わせて確認しておきます。

 

呼吸(SPO2、呼吸数)はなぜ測るの?

呼吸については安定してない場合は常にサチュレーション(SPO2)が装着されている場合が多く、モニタリングしやすい状況である場合が多いです。

先ほどの頭蓋内圧の亢進など呼吸中枢への刺激が起これば著変するので管理が必要です。

 

また意識障害認知症があっても多くは自発呼吸はありますが、誤嚥性肺炎などのリスクがあり、痰も多くなってくると窒息のリスクなどがあります。

そのため管理が必要です。

 

また呼吸中枢への刺激があるとチェーンストークス呼吸を呈したりするため、呼吸の質や呼吸数についても注意しておく必要があります。

 

まとめ

脳梗塞急性期の理学療法では、医師による指示内容や医学的な管理状況から、患者さんの現状を把握して、どのような予後を見据えているのか把握する必要があります。

そのためにバイタルサインは必須の情報となりますが、必ず他の情報と合わせて判断する必要があります。

学生時代にはバイタルサインの数値単体で基準と照らし合わせて判断していれば許されましたが、臨床では病態の把握と医学的管理状況の理解が必要になってきます。

それは数値だけで判断するとじつは何もできなくなってしまい、ほとんど中止という判断になってしまいかねないからです。

 

最善の理学療法を提供するためにもまず安全に実施できないといけないので、リスク管理はとても重要になってきます。まだまだ勉強することは山積みですが、これからも勉強を深めていきたいと思います。

 

養成校在学中に起こった「虫垂炎(いわゆる盲腸)」の体験談

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今からだいたい3年前、20代が終わり30歳になる寸前に僕は「虫垂炎」になり入院しました。

 

当時、理学療法士養成校に通学中で、仕事と学校でハードな生活でした。そんな状況で、なんとか勉強についていっている中での「入院」。

 

仕事を休むのも恐怖でしたし、学校も今まで休んだことがなく、とても不安でした。

 

医師から入院が必要だと言われた時は、絶望しましたが最終的にはなんとかなりました。

 

身体のことだけでなく、通学中にはいろいろなトラブルがあります。

正直今まで考えてなかったようなことが起こったりもします。

 

その一例として今回体験談を書いてみます。

 

 

 

今まで入院したことはなかった

今回「虫垂炎」になるまで、今まで入院したことはありませんでした。

 

骨折などのケガは経験がありますが、内科的なことでひっかかったこともなく、本当に健康でした。

 

それが通学中のこのタイミングで、まさかと思ったのですが、よくよく考えてみると今まででも一番ハードな生活+30代への突入と、今考えれば時期的にもなるべくしてなったと思います。

 

当時の生活は週6で働いていて、朝7時半には出勤し15時まで働き16時から22時までは授業で、そこから帰って23時から深夜まで勉強という生活でした。

日曜日は夜まで全日仕事で、土曜日が唯一の休みですが、土曜日に授業が入ることもありその場合休みなしという状況でした。

 

今までもタフな仕事をしてきましたが、若さで乗り越えていただけで30歳になった身体には思った以上にダメージが貯まっていきました。

 

ただ本当に通いたかった学校に通えていて、好きな勉強をできていたので自分の人生が進んでいる実感があり、充実感でなんとか乗り切れていました。

 

腹痛や気分不良を繰り返していた

思い返してみると入院が必要であることを宣告されるまでに、じつは1年前ほどから症状はあったと思います。

僕の場合は、コーヒーが唯一の趣向品でよく飲んでいたのですが、定期的にコーヒーを受け付けなくなる時期がありました。

舌の味や感覚がおかしくなり、腹痛や気分不良になるためにしばらく飲めなくなるのです。

 

しかし、数週間やめていればまた飲めるようになり、あまり気にせず飲みつづけていました。

 

思えばこれが前兆だったのかもしれません。(前兆というかもうなってたのかもしれませんが) 

 

入院の半年ほど前には一度夜中に腹痛がひどくなりすぎて救急車を呼んでみたけど、来てもらう頃にはかなりましになるという経験もありました。

 

 

ついに発熱と異常な腹痛が起こった

そんな感じで、まさか虫垂炎とは思わずだましだまし日々を過ごしていたのですが、ある夜うずくまるほどの急激な腹痛で眠れなくなりました。

 

奥さんも気づいてくれて、腸炎か何かかと思い、熱を測ると40度まで上がっていました。

 

たしかに今までの症状から、うっすら虫垂炎が頭にあったのですが、家族でなった者もいなかったので確信はありませんでした。

 

しかし、今まで柔道整復や鍼灸で勉強した内容で、マックバーネー点やムンロー点のことを簡単に知っていたので、右下腹部の圧痛でちょっとあやしいなと思いました。

 

しかし、実際は心窩部の痛みが強くて、思っていたより右下腹部だけという感じではありませんでした。

 

ネットでみると心窩部から右下腹部に痛みが波及するケースも多いとの情報もあり、とりあえず尋常じゃない痛みだったので、車で近くの救急をとっている病院にかかりました。

 

救急病院での処置

病院につくと、とりあえず大量に抗生物質を点滴されました。

診断できる医師がいなかったらしく、当直の医師がとりあえず先ほどのランツ点やムンロー点と思われる場所を押さえて痛みがないか聞かれました。

 

特に、押した後の反跳痛が無いか聞かれました。

その際、反跳痛もあり、飛び上がるほど痛みも強かったのを覚えています。

 

おそらく虫垂炎である旨を伝えられましたが、明日再度受診するように言われました。

 

その夜はそれで数時間寝かしてもらい処置が終わり、帰宅しました。

 

翌日再度受診

職場に状況を連絡し、翌日再度受診しました。

昨夜ほどの痛みはなく、熱も下がってきていたため、さほど深刻に考えずに受診したのを覚えています。

 

昨日の話では、仕事や学校を休めない旨を話したところ手術だけではなく薬で散らしたりする方法もあると言われていたので、おそらくそれで様子見だろうなと思っていました。

 

受診時は、エコーなど検査をまず行ってその結果から医師と話すような流れでした。

 

そこで実際言われたのは、虫垂炎がかなり悪化していて腹膜炎になりかかっている(というかちょっとなっている)と言われました。

 

腹膜炎といえばとても危険な状態です。たしかにずいぶん前からなっていたので心辺りはありましたが、びっくりしました。

 

そこで、仕事や学校は休めないのでなんとか手術や入院はやめてほしいと伝えたのですが、緊急で入院となり翌日手術となりました。

 

手術開始

まず前の日に手術の内容について外科の医師から説明がありました。

そして、恥ずかしいのですが下の毛を処理してもらいました。

 

次の日、全身麻酔で手術が行われました。

 

始まった瞬間意識が朦朧として暗い闇に沈むような感覚がしたと思った瞬間、手術は終了していました。

 

気づいたら、夜中で真っ暗な病棟のベッドで寝ていました。

近くに看護師さんがおられて、不安がないように状況を説明してくれました。

 

そして朝目が覚めるとICUにいました。

僕は視力が悪いため、じつはあんまり状況はわからなかったのですが、オムツを外され清拭されている際に尿カテ-テルが刺さっていることに気づきました。

 

全部初めてだったので、全身麻酔をするとこんな状況になるのかと意識が朦朧としながらもびっくりしていました。

 

その後、すぐに病棟へ移動になりベッドごと病棟に運ばれました。

じつは腹部の切ったところが思った以上に痛くて全然動けませんでした。

 

病棟での生活

そこから病棟での生活が始まりました。

まさか腹部をちょっと切っただけで、ここまで何もできない程動けないと思っていなかったのでびっくりしました。

 

気づけば手には点滴と、脊柱から痛み止めのためのスパイナルドレーンがはいっていました。それに尿カテーテルという感じです。

 

なんか重症みたいだなと思いながらも数日でそれらは外れました。

 

しかし、困ったのは尿カテーテルが外れた後、なかなか尿が出なかったことです。

看護師さんからあまりに出ないとまた尿カテ-テルを入れないといけないと言われ、それだけは嫌だと危機感を覚えました。

 

尿カテーテルを外す際も痛いと聞いていたのですが、そこは思ったほど痛くありませんでしたが、恥ずかしいしもう経験したくないと思いました。

 

2週間の入院期間

そこから約2週間入院しました。

痛くて体動も困難なときは本当に苦痛でした。

そして老人が多い病院だったので、話し相手もなく、家族やクラスメイトなどが見舞いに来てくれる以外は本当に暇でした。

 

なので教科書を持ち込んで勉強に時間を使いましたが、ベッド上では勉強しにくくて本当に苦痛でした。

 

また食事も最初は絶食で、食べれるようになっても普通食ではなく、ほとんど湯だけの粥などでずいぶん痩せました。

 

体重でいうと5kg以上減りました。

 

学校も仕事もなんとかなった

それまで学校や仕事を休むなんて考えれなかったのですが、どうしようもない状況になると休めるんだということを知りました。

 

職場も自分しかできない業務について考えていましたが、事情を説明してもらい何とかまわっていました。

たくさん迷惑をかけてしまいましたが、本当にどうしようもない時って周りが動いてくれて何とかなるのだと思いました。

 

当時職場ではいろいろありましたが、その時は本当に感謝しました。

 

また学校もクラスメイトが連絡をくれたりお見舞いにきてくれたりして、状況を教えてくれなんとか遅れを取り戻すことができました。

 

 学校に復帰した際は、授業内容を数時間かけて毎日内容を教えてくれる親切なクラスメイトもいて本当に感謝しました。

 

そして何よりこんな緊急の状態に対応してくれ、学校や職場に状況を連絡して、日々サポートしてくれた奥さんにはもう感謝しかありません。

いつも心配してくれて、ほとんど毎日病院に来てくれました。

 

こういう状況になり、自身のことが自分だけでできなくなったのは初めてで、今まで感じた事のないレベルで周りの人のありがたさを感じました。

 

これは迷惑をかけてしまいましたが、自身にとって貴重な経験となりました。

 

その後

2週間もすると、最初は寝返りもうてない程だったのが、普通に歩けるようになりほぼ元の状態に戻りました。

ただし手術痕の圧痛などはしばらくあり、今でも腹筋に負荷がかかった時に時折痛みを感じることがある程度は残りました。

 

しかし、それはさほど問題ではなく、実際は2週間も寝ていたため、体力が相当落ちていてそれが戻るまで時間がかかりました。

 

しかし、無事学校も仕事も復帰して2週間後には元通りの生活となりました。

その後もハードでしたが、特に病気もすることもなくこなすことができました。

 

病気が理由でしたが、2週間思いきって休んでみると、精神面も回復でき結果的にいい機会になったのかもしれません。

 

まとめ

今回は僕のただの虫垂炎の体験記で、興味のない方はすいません。

ただ養成校通学中は、予期せぬトラブルが起こる事があります。

 

体調の変化などは常に意識して早めの受診をおすすめしますし、万が一トラブルがあっても数週間であれば復帰できるので絶望することはありません。

 

特に社会人で学業をしている方はいろいろあると思います。大変な場面もあると思いますが、ぜひ夢を達成できるよう応援しております。

【はてなブログ無料版】3ヵ月の運営結果まとめ

はてなブログを無料版で始めてもうすぐ3ヵ月経とうとしていますので、現在までのアクセス状況と運営についてまとめてみます。

 

 

1ヵ月目

まず本ブログを開始するにあたり、テーマとブログタイトルを決めました。

テーマは、柔道整復師鍼灸師理学療法士またはその学生に向けての情報に特化することにしました。

正直ターゲットがやや絞り切れていないながらも、自身の学生生活や勤務経験などから体験をもとに記事を書き進めていきました。

 

じつはブログ開始前に予めある程度文章を作成していましたので最初はそのストックを使い、文章をうつことよりもブログのデザインを考えたり、文章を見やすくするための勉強に時間を使いました。

 

そのため1週間程は、他のブログから勉強させてもらい(丁寧に説明してくれている親切な記事も多数あります)徐々にブログを形にしていきました。

 

そして勉強していくうちにプロフィールの記事の重要性に気づいたので作成しました。

またできるだけプロフィールを読んでもらいやすいように、プロフィールに飛ぶ窓口も数か所作りました。

pthari.hatenablog.com

そしてgoogleアナリティクスとsearch consoleを導入しました。

これでこれからアクセスが蓄積されれば、分析することができます。

 

1ヵ月目は半ばからgoogleアナリティクスを導入したので正確なアクセス数はわかりませんでした。20日以降の10日間で2000PVくらいだったので、だいたい3000PV程度ではないかと思います。

 

2ヵ月目

2ヵ月目はTwitterを開始して、ブログと連動させました。それにより、リツイートしてもらえたりでアクセスが急に伸びる日などがありました。

Twitterを通して連絡してくださる方もおられとても励みになりました。

 

また国家試験の免許申請の記事など数記事が時期とマッチしてアクセスが伸びました。

 

また読者数が100を越えました。

 

仕事が忙しくなり、更新頻度は落ちましたが、総合的なPV数は少し上昇して3700程度になりました。

 

3か月目

まだ3ヵ月まで2日間あるのですが現在で、PV数6200と伸びてきています。

※追記:2日後7000まで伸びました。

 

今月も更新頻度はかなり落ちてしまっていますが、徐々に検索流入が伸びてきて180~270/日くらいになり、1日のアクセス数も200~300になってきました。いい日では400までいく日もでてきました。

 

記事数は54記事となりました。

 

まとめ

ここまで順調にアクセスが伸びてきています。

proに以降していこうかとも考えていますが、もう少し記事を書く勉強も兼ねて無料で進めていきたいと思います。

 

方向性としてはもう少し、ターゲットを絞って、より需要のある情報を書けたらいいなと思っているのですが迷走中です。

しばらくは今まで通り、経験をもとに記事を書いていきたいと思います。

 

いつも読んでくださる方がもしおられましたら、今後ともよろしくお願いします。