【解剖学・生理学】中枢神経まとめ。
中枢神経とは「脳と脊髄」のことです。
これらの中に「灰白質」と言われる細胞体の塊と「白質」と言われる軸索の塊があり、場所ごとに名称がつけられています。
そしてそれらを繋ぐ、上行性、下行性の経路は伝導路と呼ばれ、役割ごとに分類されています。
この伝導路の終末は前角細胞や後角細胞(例外はあります)であり、そこから末梢神経に変わります。
中枢神経を理解するには、まずそれぞれの部位を整理して、次に伝導路がどう走行して対応する末梢神経に繋がるかを知ることが重要になります。
最初は大まかな全体像から説明していきます。
中枢神経の全体像
①大脳皮質
③脳幹(中脳・橋・延髄)
④小脳
⑤脊髄
これらが全体像となります。
この①~⑥それぞれに枝葉のように覚える項目があるのですが、まずはこれらの位置関係と名称を整理することが重要です。
中枢神経の理解が難しく感じる理由の一つに、他の臓器に比べてイメージしにくいという点が考えられます。
そのため、この①~⑥のどの部位の詳細を覚えているのか常に照らし合わせて整理していくことが理解のポイントになってきます。
どこを覚えているのか迷子にならないように常にこの全体像に立ち戻って覚えていきましょう。
大脳皮質
これは脳の表面の薄皮のことであり、その表面に灰白質という神経細胞の塊が覆っていて、これを大脳皮質といいます。
大脳は重要な部位になりますが、じつは表面の薄皮がもっとも重要になります。
内側にも視床や大脳基底核といった灰白質の塊があるのですが、内側を構成するのは主に軸索です。
つまり脳は表面の薄皮以外はほとんど通り道である軸索で構成されています。
なので稀少な灰白質の部分はすべて重要となります。
その中でも大脳皮質はとても重要な機能を担っているため、しっかり覚える必要があります。
ではこの大脳皮質について整理していきます。
【大脳の機能局在】
大脳皮質には機能局在と呼ばれるマップが存在します。
つまり場所ごとに大まかに機能がきまっているのです。
まずはこの機能局在を理解していきます。
①一次運動野(中心前回)・・・4野
②一次感覚野(中心後回)・・・3.2.1野
③一次視覚野(鳥距溝)・・・17野
④一次聴覚野(横側頭回)・・・41野、42野
⑤ブローカ言語中枢(運動性言語中枢)・・・三角部
⑥ウェルニッケ言語中枢(感覚性言語中枢)・・・縁上回・角回
数字で書いているのは、ブロドマンの地図といわれる分類で、こちらの表記もよく使われます。
次に、あまり理解の優先度は高くありませんが、これらの他にも名称がついている部位があります。一緒に整理しておきます。
①補足運動野・・・6野
②運動前野(二次運動野)・・・6野
③前頭眼野・・・8野
④二次感覚野
⑤二次視覚野
⑥二次聴覚野
では、これら以外の空白の場所はどうなるのでしょうか?じつはこれらはすべて「連合野」呼ばれる部位になります。
ここではそれぞれの~野で理解された情報が統合される場所になります。
我々が感覚を感じた後、それぞれを総合的に理解して認識します。そのためにそれぞれの感覚がリンクする場所が必要というわけです。
この連合野では、高次脳機能(認知・行動・制御・思考・記憶)を司るといわれ、大脳皮質の75%もの面積を占めると言われています。
運動前野と補足運動野は聞きなれない用語ですが、運動の命令を送る際に一次運動野とともに重要な役割をする部位です。
運動前野・・・視覚情報を経験に基づいた熟練運動に変換する部位と言われます。
補足運動野・・・記憶に基づいた連続運動に関与する部位と言われます。
ここまでは「脳の機能」についての名称を整理してきました。
次はややこしいのですが、解剖学的な「脳の形」に付けられた名称を整理します。これも一緒に覚えておかなければいけません。
【大脳の葉】
①前頭葉
②頭頂葉
③後頭葉
④側頭葉
また、脳の凹凸を脳溝と脳回といいますが、これらにも名称がついています。
【脳溝・脳回】
①中心構(ローランド構)
②外側構(シルビウス溝)
③頭頂後頭溝
④上前頭溝
⑤下前頭溝
※上前頭溝、中前頭溝、下前頭溝
⑥上側頭溝
⑦下側頭溝
※上側頭溝、中側頭溝、下側頭溝
⑧三角部
⑨縁上回
⑩角回
【図】
この内、①②③は脳の位置関係を理解するためによく使われるため知っておく必要があります。
また、⑨⑩は疾患の理解のために重要となってきます。
【メモ】
左縁上回の障害→観念運動失行
左角回の障害→観念失行、Gerstman症候群、失読、失書
これらの大脳皮質の主要な部位を覚えたら、次は血管の分布を覚えておく必要があります。
大脳皮質の理解で重要なのは、先ほどの機能局在(~野)、形の名称(~葉・脳溝、脳回)、そしてこの血管分布図の三つを重ねてイメージできるようになることです。
これができるようになると、大脳皮質の全体像がわかるだけでなく、脳卒中の際の損傷部位と症状の関連を理解できるようになります。
なので臨床的にも非常に重要な知識です。
脳の血管分布を知るにはまずウィリスの動脈輪を理解しましょう。
【ウィリスの動脈輪】
①内頚動脈
②前大脳動脈
③中大脳動脈
④椎骨動脈
⑤脳底動脈
⑥後大脳動脈
⑦前交通動脈
⑧後交通動脈
【図】
そしてこの内、もっとも末端になるのが前大脳動脈、中大脳動脈、後大脳動脈です。ここから皮質枝といわれる細い枝が大脳皮質の表面まで分布して、大脳皮質の神経細胞を栄養しています。
つまりこの血液供給が途絶えると脳細胞は死んでしまいます。中枢神経の神経細胞は末梢神経と違い再生できないので一度死ぬと元に戻りません。
では具体的に、この三つの大動脈がどのように分布しているのでしょうか。
それぞれの分布領域は以下となります。
【大脳皮質の血管分布】
これで大脳皮質についての知識が整理できてきたでしょうか?
①機能局在(~野)、②形の名称(~葉)、③そしてこの血管分布図の3つの図を重ねて大脳皮質のイメージができるようになりましょう。
この3つを関連して理解できれば、どの血管が障害されれば、どの部位が障害されるかわかると思います。
それがそのまま脳卒中の時には症状として現れます。
【メモ】
じつは中大脳動脈、後大脳動脈は大脳皮質だけでなく、脳の内側にある構造にも枝を伸ばしています。これらには名称がついているので、整理しておきます。
ちなみに大脳皮質への枝は、特に名前のついていない名も無き枝となりますがこれらと同列に重要なものとなります。
また、脳内側にいく枝を「穿通枝」、脳の表面である大脳皮質にいく枝を「皮質枝」と表現したりします。
まず脳室を理解する
ここまでは大脳皮質について整理してきました。
次は脳・脊髄の位置関係を整理していきます。
中枢神経の構造は立体的で、大脳皮質以外は位置関係の理解が難しくなります。
というのも上下だけでなく前後左右の位置関係を理解していく必要があるからです。
これをどう整理していくかというと、脳室の位置関係をまずしっかり理解することが重要です。
なぜ脳室かというと、脳画像(MRI、CT)で位置関係を知る際に明瞭に把握できる脳室を軸に考えていく事が多いからです。
まず脳室を理解して、その付近にどのような構造があるのか知っておきましょう。
では脳室の全体像はどのようなものでしょうか「。
①側脳室(室間溝:モンロー孔)
②第3脳室
③中脳水道
④第4脳室(外側孔:ルシュカ孔、正中孔:マジャンディ孔)
⑤中心管
ではこれらが最初に示した中枢神経の目次とどのようにリンクしているかまとめてみます。
①側脳室 →大脳(終脳)
③中脳水道 →中脳
④第4脳室 →前方は橋・延髄、後方は小脳に囲まれる
⑤中心管 →脊髄
だいたいこのような位置関係でリンクしています。
なので脳画像でそれぞれのレベルでスライス撮影した時に、当然これらの脳室も一緒に写ることになります。
ちなみにこれら脳室系は脳脊髄液を循環する空間となるのですが、それについては今回は割愛させて頂きます。
間脳と大脳基底核
ではまず大脳の内部構造で最も重要であり、深く理解する必要のある「間脳」と「大脳基底核」について理解を進めていきます。
間脳とは「視床」と「視床下部」のことで、上下の位置関係としては視床の下に視床下部がぶら下がってるような形になります。
【図】
脳画像としては第三脳室と側脳室の下の方が一緒に写ることになります。
では大脳基底核とはなんでしょうか。
これはいくつかの構造物をまとめた総称のことで、まず大脳基底核の内訳を覚えなければいけません。
これは語呂合わせで覚えてしまいましょう。
今回は一例を紹介しておきます。
一つ目は「ひかったレンズ日々洗浄」です。
ひかっ ・・・被殻
た ・・・淡蒼球
レンズ・・・レンズ核
日 ・・・被殻
々 ・・・尾状核
洗浄 ・・・線条体
「レンズ核」は被殻+淡蒼球の総称、「線条体」は被殻+尾状核の総称であるためこれらだけで一つの語呂が作られています。
ではそれ以外の構造物を覚える語呂ももう一つ追加します。
二つ目は「自然にへ~こく」です。プッって感じです。
自・・・視床下核
然・・・前障
に
へ~・・・偏桃体
こく・・・黒質
※理学療法士の国家試験では黒質は含まないとして出題されるため注意が必要です。しかし、解剖学の成書では黒質を含むとされているため、今回は一緒に覚えましょう。
ではそれぞれどんな役割をするのでしょうか。
おおまかですが大脳基底核は主に「運動の調節(錐体外路と関連して)」、視床は「ほぼすべての感覚の中継点」としてとても重要な構造だとイメージしてください。
そしてこれらにわざわざ名前がついているのは、ほとんどが軸索で占められる大脳の内側において、細胞体の塊(灰白質)として存在する場所だからです。
大脳で灰白質と言えば、大脳皮質でしたがじつは内部にもこれら重要な灰白質が存在するのです。
これで視床、大脳基底核の存在を少し認識できたのではないでしょうか。
では次にそれぞれの位置関係を見てみましょう。
まず脳画像でよくみるスライスで位置関係を整理します。
①尾状核
②淡蒼球
③被殻
④視床
⑤前障
⑥内包
【図】
第三脳室を挟むように視床があり、その外側にレンズ核(被殻、淡蒼球)があるのが理解できると思います。
その間を通る軸索の束を内包と言います。
この内包は後に伝導路の理解で重要となります。というのも錐体路といわれる下行性の伝導路のうち主要な部分になるからです。
なぜ主要かというと、その位置関係から脳卒中により障害されやすい場所になるためです。脳画像を読む際にもここに脳の出血が広がっていないか知ることは麻痺の程度を予測する上でとても重要になります。
このレベルの位置関係をしっかりしっておくことは脳の理解で要になってくるところです。
では立体的な図で位置関係をイメージしてみましょう。
【図】
第3脳室を取り囲むように、外側に視床がありそのさらに外側に大脳基底核があるのがわかると思います。
そしてこの構造物の外側を大脳が取り囲み、下方では脳幹に繋がっていくのも理解できると思います。
また脳室系で言うと第3脳室から中脳水道、第4脳室につながってきます。
ではここでもう一つ追加で構造物を覚えておきましょう。
大脳基底核の外側はたしかに大脳が取り囲むのですが、その前にもう一つ取り囲む構造物が存在するのです。
それが「大脳辺縁系」と言われる場所になります。
大脳辺縁系
大脳基底核は主に「運動の調節(錐体外路と関連して)」、視床は「ほぼすべての感覚の中継点」としてとても重要な構造です。
では大脳辺縁系とはなにかというと、記憶と情動をコントロールしている部分と言われています。
この辺縁系により起こった原始的な感情(快不快や好き嫌い、怒りと恐怖、攻撃と逃避など)を前頭葉が理性的に抑制することで人間は理性を保っています。
この感情の元が大脳辺縁系であると理解しましょう。
では話を戻すのですが、これをなぜ今話すかというと位置関係的に大脳基底核の外側に存在するからです。
そして大脳辺縁系も大脳基底核と同じように構造物の総称を表す言葉です。
その内訳をまずは知っておきましょう。
今回も語呂を一例紹介しておきます。
1つ目は「海で弓子の乳みて退場かい?」です。
海・・・海馬
で
弓子・・・脳弓
の
乳・・・乳頭体
みて・・・視床前核
退場・・・帯状回
かい?・・・海馬傍回
またもや二つにわけて語呂をつくるのはこの一連の構造物はパペッツ回路と言われるためです。パペッツ回路は情動回路として有名で、最近では短期記憶にも関わっていることがわかっています。
では残りの構造物も一緒に覚えてしまいます。
2つ目の語呂は「変態漁師中島」です。
変態・・・偏桃体
漁・・・梁下野
師・・・視床下部、歯状回
中・・・中隔核
島・・・島皮質
これで大脳辺縁系の概要が理解できたと思います。
では大脳基底核との位置関係を図でみてみましょう。
①帯状回
②歯状回
③脳弓
④偏桃体
⑤乳頭体
⑥視床前核
⑦海馬傍回
【図】パペッツ回路をかいてるやつ
【図】基底核との位置関係を示しているもの
これで第3脳室を中心として外側に広がる視床、大脳基底核、大脳辺縁系が整理できてきたでしょうか?
この高さの位置関係は脳画像を見る上で非常に重要になります。
理解しておきましょう。
脳幹
次は脳幹(中脳・橋・延髄)のそれぞれの主要な部位を理解していきます。
【中脳】
中脳の主要な部位は以下となります。
①中脳水道
②中脳網様体
③赤核
④黒質
⑤四丘
⑥大脳脚
【図】
この内、大脳脚は中脳の前面の軸索の塊を指し、内包を通る軸索が繋がってくるところとして重要です。
【橋】
①第4脳室
②中小脳脚
③橋背部(橋被蓋)
④橋腹部(橋底部)
【延髄】
<前面>
①オリーブ核
②錐体
③延髄網様体
<後面>
①薄束
②楔状束
③内側毛帯
ここは大脳脚からの軸索が繋がる錐体があり、ここで錐体交叉します。
また後方では後索(薄束・楔状束)から上行性に上がってきた軸索が交叉する毛帯交叉があり、構造上有名な場所が多くあります。
【小脳】
①第4脳室
②小脳半球
③虫部
⑤片葉
⑥小脳扁桃
⑦小脳核(栓状核、歯状核、室頂核、球状核)
※大脳辺縁系の歯状回と小脳の歯状核は混同しやすいので注意。
脳神経の中枢
【延髄】
「ジュンコの応援団席」
【橋】
呼吸調節中枢
排尿調節中枢
【視床下部】
それ以外
脊髄
前角、側角、後角
前索、側索、後索
伝導路
ここまでで中枢神経の主な構造物は整理できたと思います。
これらを上下に繋ぎ、役割ごとに分類したのが伝導路です。
伝導路は主に上行路(感覚)、下行路(運動)に分けられます。
以下に全体をまとめてみます。
【理学療法士】トイレ動作の前にチェック!尿意・便意が無い場合は、退院後介助者必須!?
トイレ動作って理学療法を進めていく上でポイントになることが多いと思います。
その際、ついつい起立・着座や立位保持、下衣の更衣、移乗などの動作に着目しがちですが、意外と重要なのがそもそも「尿意・便意があるのか」というところです。
今回は、リハビリを進める上で重要な「尿意・便意」についてまとめてみます。
トイレはなぜ重要なの?
回復期病院では、退院先(あるいは転院先)を想定してリハビリを進める必要があります。
そこでまずself-care(食事・トイレ・入浴。整容・更衣)を中心に、「現状の能力」を評価していきます。
そして評価の結果わかった「現状の能力」と、「入院前の生活」、「今後の転帰先の生活」を照らし合わせていきます。
ここで転帰先が自宅になる場合、self-careの中で一番ポイントになるといっていいのが「トイレ動作」となります。
入浴や食事は確かに重要ですが、一日に回数が決まっていて、通所施設などに頼りやすいといえますが、トイレはそうはいきません。
必ず介助者が必要となってきます。
介護度によっては一日に数回ヘルパーさんにお願いすることもできますが、夜間などどうしても家族の介助が必要になる場面がでてきます。
トイレ動作自体はポータブルトイレにするなど難易度を落とすことができますが、尿意・便意が無ければオムツが外せません。
なので自宅に帰るための必須条件がトイレ動作の自立になることが多く、尿意・便意があるかが自宅に帰れるかどうかの分かれ道になるケースはよくみかけます。
ついつい動作に着目してしまいがち
理学療法士としては、どうしても動作に着目してしまいがちで、上記に書いたように起立・着座や立位保持、移乗などの評価を優先してしまいがちです。
しかし、もしトイレにいくことが退院の条件になりそうな場合は、尿意・便意の有無を必ず確認しておかなければなりません。
これは多くは認知面の問題を抱えるケースで重要になってきます。
評価としては、病棟での動作に介助を要する場合、コールを押してナースに自分から依頼できているかどうかです。
恥ずかしくて押せず、失禁してしまうような場合もあるので、患者さん本人やナースに日々のトイレの状況を詳しく聞いておかないといけません。
またリハビリ時に、トイレの訴えの確認をしておくことも有効です。
これらを、丁寧に実施することで尿意・便意があるかどうか把握できてきます。
尿意・便意があれば、その後トイレ内の動作を確認していきます。
尿意・便意なく自宅に帰るとどうなるの?
尿意・便意が無くても自宅に帰ることは可能です。しかし、トイレに行きたいかどうかわからないということは、常に尿や便を漏らしてしまうことになります。
なのでオムツ着用となり、家族が常に交換しなくてはいけない状況となります。
清潔にする必要もあり、その介護は重度なものとなることは容易にイメージできます。
もし交換しない場合、常にオムツは不潔な状態となります。
他にも重要なポイントはあるの?
動作面はもちろん重要で、起立・着座動作や移乗・立位保持ができることで介助量はかなり軽減します。トイレ動作を遂行するためにもこれらの評価は重要になってきます。
しかし、その前に見落としやすいのは、寝返りや起き上がりが十分できるかどうかです。
これらができない場合、いわゆる寝たきりの状態となってしまいます。
そのまま自宅に帰れば常に家族が体動を手伝わないと、褥瘡リスクがたかまってしまいます。
これもかなり重度な介護を家族に強いることになります。
まとめ
今回は、動作を評価する前に重要なポイントとなる尿意・便意の有無について書いてみました。
ついつい動作面ばかりみてしまいがちですが、自宅での生活を考えると非常に重要なポイントとなりますし、ご家族と今後の事を話し合う場面でも伝えるべき情報となります。
患者さんの生活を想定して、適切なリハビリを提供できるよう頑張ります。
【柔道整復師・理学療法士】今更聞けない物理療法機器の効果。TENS・干渉波・EMS・超音波の違い。よく聞くマイクロカレントとは?
物理療法はセラピストにとって、ごく一般的な治療手段の一つです。
しかし、その効果を有効に使えていないこともよく見受けられます。
今回は物理療法機器の中でもよく使われるものを中心にまとめます。
- 物理療法機器の効果って?
- 主に慢性期に適している
- マイクロカレント(微弱電流)とは
- EMS(電気的筋肉刺激)とは
- 周波数とは
- 強度とは
- 低周波が一般的
- 超音波とは
- 金属挿入で禁忌となる機器は?
- まとめ
物理療法機器の効果って?
物理療法機器の効果は大まかに分けると、「鎮痛」「機能改善」「組織再生促進」の3つになります。
このうち機能改善とは、筋力強化や関節可動域改善を指しています。
しかし、これらの効果を適切に発揮するには、状態に合わせた機器を選択する必要があります。
機器ごとに供給できるエネルギーが違い、それを適切に選択しなければ効果は得られません。
主に慢性期に適している
物理療法機器の多くは慢性期の症状に対して使われます。
疼痛緩和にはTENS(低周波)、干渉波(低周波)が適しており、可動域改善には超音波、筋力強化にはEMS(低周波〜高周波)などが用いられます。
ちなみに物理療法機器は炎症がある急性期には適しておらず、炎症が落ち着いた亜急性期であれば超音波や極超短波(マイクロ)による組織再生の促進が期待できます。
急性期はやはりRICE処置が一般的です。(※RICE:安静、冷却、圧迫、挙上)
しかし、最近この急性期に使える機器が現れ注目されています。それが、マイクロカレントと言われるものです。
マイクロカレント(微弱電流)とは
マイクロカレントは微弱な電流で無感覚であり、急性期でも使えるものとして注目されています。
効果は主に治癒促進で、鎮痛作用もあります。
また急性期特有の炎症や腫脹の軽減にも作用します。
最近注目されていますが、無感覚のためやや扱いにくいのと、文献による効果の裏付けがまだまだこれからという点が課題であると言われています。
やはり機器での急性期治療はまだ一般的でないのが現状です。
商品化されているものでは、お顔のコロコロローラーのRefaもこの作用を利用しています。
EMS(電気的筋肉刺激)とは
筋力強化に使われるEMSとはなんでしょうか?最近話題のシックスパッドもこれに含まれます。
要はTENSや干渉波と同じように電流刺激の一種です。
電流刺激は強度や周波数を調節することにより筋収縮を得ることができ、それを利用したものです。
メリットは関節運動を伴わずに安全に筋収縮を起こせることで、廃用性の筋萎縮予防に適しています。
強度を上げればそのまま筋力トレーニングとなるので、幅広く一般向きのシックスパッドのような商品もでてきています。
ちょっと前でいえば、アブトロニックとかも話題になりました。
筋ポンプ作用も起こせるため、循環改善も期待できます。
周波数とは
周波数とは、よく見るパルスの波の図を思い浮かべてほしいのですが、あの波が一秒間に何回あるかというものです。
単位はHz(ヘルツ)です。
実際に機器で、このHzを上げていくと1〜5〜10と上がるごとに、トン…トントン…トントントンと刺激の感覚が短くなり、20を超えるとトトトトと刺激がつながり、いわゆる強縮になります。
強縮とは、神経の活動電位による1つの刺激が重なり、ピクッとした一回の筋収縮がピクピクピクとつながって、関節を曲げるような持続的な筋収縮になることです。(擬音語ばっかりですいません笑)
約1〜30Hzでは慢性期の鎮痛効果があり、20〜80Hzでは筋肉刺激が起こせると言われています。
強度とは
これは先程のパルスの波1つ1つの高さです。
活動電位が閾値を超えたら、筋収縮が起こるのと一緒で、パルスの強さを調節して閾値を超えると筋収縮が得られます。
この強度と周波数を調節して、敵刺激を作っていくことになります。
例えば、麻痺がある人は閾値が高い場合が多く、強度を上げて筋収縮が起きるか確認する必要があります。
ただし、強度を上げすぎると火傷リスクがあることと、筋疲労により過用症候群を起こさないよう注意する必要があります。
強度の強さを弱いもの順に比較すると、マイクロカレント(微弱電流)→TENS・干渉波(低周波)→EMS(電気的筋肉刺激)となります。
低周波が一般的
低周波は電流刺激の中でも汎用性が高く、最も一般的な機器となります。
種類としては、疼痛軽減目的のTENS、干渉波が有名です。
他にも、TESと言われる痙性麻痺の拮抗筋に対する刺激により随意運動回復を目的とするものや、FESという麻痺筋をかわりに筋収縮させて使うための電気刺激など、様々な種類があります。
しかし、基本は電流による神経刺激であり、感覚神経に作用すれば鎮痛、運動神経に作用すれば筋収縮を起こします。
感覚、運動両方にアプローチできるため幅広く使えるメリットがあります。
超音波とは
超音波も低周波の次によく使われる印象があります。
この超音波は強度を調節することで、非温熱効果と温熱効果の使い分けができます。
0.5〜1.0w/c㎡では非温熱効果となり、組織再生の促進に有効です。
1.1〜2.0w/c㎡では温熱効果となり、鎮痛や組織の弛緩、筋緊張緩和などが期待できます。
またメリットとして、金属挿入されている患者さんにも使えるというポイントがあります。
金属挿入で禁忌となる機器は?
金属挿入といえば、人工関節や骨頭をはじめ脊椎や骨折部の固定など臨床ではよく出会うケースです。
しかし、じつは低周波や極超短波(マイクロ)は金属挿入部への使用は禁忌となります。
これはかなり重要であるため、必ず知っておかなければいけません。
効果も大切ですが、禁忌の理解は物理療法機器を扱う上で必須になります。
まとめ
物理療法機器についてまとめてみました。
国家試験でもよく問われますが、臨床で有効につかうには更に勉強が必要だと感じました。
他にもレーザーなどの機器や、パラフィン浴、ホットパックなど様々な物理療法があるため今後も勉強していきます。
【解剖学】皮膚のターンオーバーって何?表皮と真皮の違いとは?【エステ・美容鍼】
よく聞く皮膚の「ターンオーバー」って今更ですがなんでしょう?
というか、そもそも皮膚ってどんな構造でしたっけ?
今回は、忘れがちな皮膚の構造からターンオーバーの仕組みについてまとめてみます。
皮膚の構造
「皮膚」とは、所謂「お肌」のことです。皮膚というとイメージどおり数ミリの薄いものですが、じつは大まかに3層に分かれます。
この3層が「表皮・真皮・皮下組織」です。
このうち一般にイメージされる皮膚というと、表皮と真皮の部分になると思います。
では皮下組織とは何かというと、脂肪の層です。所謂、皮下脂肪です。
解剖学的にはここも、皮膚として扱われます。
では表皮から順に、まとめていきます。
表皮とは
一番表面の部分、私たちが触っているお肌とは主にこの「表皮」です。
表皮という名前の通り、一番浅い部分を指します。
そして、その中でもさらに表面の薄い部分を「角質層」といいます。
これは、一般でいう「垢」のことです。
この角質って垢だからいらないものかというと、とんでもありません。
表皮は生きた細胞の塊で、角質層はその細胞を守るバリアの働きをします。
このバリアがなければ、皮膚は過敏になりすぐに炎症を起こしてしまいます。
この角質(垢)があるから、健康的な肌は保たれています。
また、この角質(垢)とは何でできているかというと、表皮の生きた細胞が死んだものです。
では、この生きた皮膚の細胞というのはどこでできるのでしょうか?
じつは、表皮の底には基底層という部分があり、そこで生まれます。
つまり表皮とは、上から順に①表面の角質(垢)②生きた表皮細胞③細胞を生み出す基底層の3つに分かれています。
ここまで表皮を知れば、じつはターンオーバーってほとんど理解したも同然です。
次は、ターンオーバーについてまとめます。
ターンオーバーとは?
ターンオーバーとは、じつは先程の「表皮の生まれ変わり」のことを言います。
ここで重要なのは、表皮の構造をしっかり押さえておくことです。
表皮の構造とは、
①「角質層(垢)」※死んだ表皮細胞
②「表皮細胞」※生きた表皮細胞
③「基底層」※表皮細胞を生み出す
この3つです。
ではターンオーバーの流れとはどのようなものでしょうか。
①まず基底層で表皮細胞が生まれます。
↓
②次に約28日かけて、表皮細胞は死んでいき、角化して角質層となります。
↓
③角質層が垢として剥がれ落ちます。
この表皮の生まれ変わりを、ターンオーバーといいます。
ターンオーバーを約1か月ごとに、繰り返すことで絶えず皮膚は保たれています。
ただ年齢とともに、このサイクルの期間は長くなり、年々角質層が厚くなるとともに生きた表皮細胞は薄くなっていきます。
そのため、高齢者の肌はカサカサになりやすく、乾燥しやすくなります。
【真皮とは】皮膚の構造柔道整復師/鍼灸師/理学療法士 3つの資格を取得。学生向けに「リハログ」を運営しています。30代一児の父として頑張ってます。よろしくお願いいたします #柔道整復 #鍼灸 #理学療法 #学生 #
真皮は、表皮の1番下の基底層のさらに下にあります。
この真皮は、美容商品のキャッチフレーズでよく目にする、コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸などによりできています。
表皮は細胞の塊なのに対して、弾力を保つのが真皮層です。
そのため表皮は細胞の生まれ変わりにより傷がついたとき再生できます。しかし、真皮は主にコラーゲンでできているため傷がつくと完全に元どおりになりません。
表皮と真皮の違い
表皮と真皮はまずその厚さが違います。
表皮は0.3ミリ程度なのに対して、真皮は1〜4ミリあると言われています。
また、重要な違いは表皮はターンオーバーがあるのに対して、真皮はありません。
真皮は細胞の塊ではなく、主にコラーゲンやエラスチンなどの線維(蛋白質)と、ヒアルロン酸といわれる水分でできています。
そのため、「線維芽細胞」と言われる細胞により生み出されます。
表皮と真皮ではその生まれ変わりに差があります。
表皮は若ければ約一か月で生まれ変わることに対して、真皮は数年かかると言われています。さらに年齢を重ねると、真皮は徐々に生まれ変われなくなってしまいます。
基底層と線維芽細胞
表皮と真皮を整理した時、よくわからないのが、この2つではないでしょうか。
それぞれの役割をもう一度整理してみます。
「線維芽細胞」とは全身の結合組織(コラーゲンなど)に散々している細胞で、例えば筋では筋線維芽細胞、骨では骨芽細胞、肺では肺線維芽細胞というように固有の名前があります。
これが真皮にも存在しており、真皮ではコラーゲンの再生に関わっています。
それに対して、表皮の1番底にある基底層は血管から栄養を受け取り、表皮細胞を生み出します。
また、基底層はその下の、真皮を守るバリアの役割をしています。
皮下組織とは
最後に皮下組織とは主に脂肪層で構成されています。
そのため、個人ごとにその厚さは差があります。
皮膚というくくりで整理すると、この皮下組織も皮膚の一部に含まれます。
まとめ
話をややこしくするのが、表皮、真皮、皮下組織という3つ層があるうちの、表皮の中にさらに3層あるというところではないでしょうか。
ここをしっかり押さえることが、理解のポイントです。
ちなみに皮下組織の下は、筋膜そして筋肉となります。
余談ですが、鍼はこの層まで貫くことができます。手では直接触れない層に直接アプローチできることも鍼の魅力の1つです。
【生理学】伸張反射とⅠa抑制・Ⅰb抑制まとめ
- 筋緊張の異常と反射の関係
- 伸張反射
- Ⅰa抑制(拮抗抑制、相反性抑制)
- Ⅰb抑制(自原抑制)
- Ⅰa、ⅠbとかAα、Aγって何?
- 数字式分類(Lioyd-hunt分類)
- 文字式分類(Erlanger-gasser分類)
- まとめ
筋緊張の異常と反射の関係
筋肉は何もしていなくてもある程度の緊張が保たれています。
そしてその緊張は、運動をする時には自動的に適切な状態に調整されます。
そこで初めて、頭で思った動きが自然に行えます。
これがうまくいっていない状態と言えば、例えば脳卒中により運動麻痺が起きている状態です。
運動麻痺とは、中枢神経内を走行する下行性の伝導路(錐体路、錐体外路)のいずれかの場所で障害され、運動の命令が適切に筋に伝わらなくなった状態です。
なので、弛緩性麻痺のような全く出力できない場合だけでなく、出力はできるけれどもその調節がうまくいかない状態も含まれます。
それに対して、以上に緊張が高まったり、緊張をコントロールできなくなったりする麻痺もよく見かけます。これは痙性麻痺と呼ばれ、筋緊張が亢進している状態です。
麻痺と言えば動かないことをイメージしますが、動かせるかどうかという要素の他に筋緊張がコントロールできなくなっている現象も包括しています。
運動麻痺とは随意運動の障害の他に、いわゆる筋緊張の異常も含めた包括的な表現です。
では、中枢神経がやられるとなぜ筋緊張の異常が起きてくるのでしょうか?
この筋緊張の異常の原因の一つとして、筋緊張をコントロールしている中枢神経が障害されることで「反射」を抑制できなくなることがあります。
ヒトは生まれてから様々な反射が出てきたり消失したりしながら、最終的に抑制され身体をコントロールできるようになってきます。そして必要な反射のみ姿勢制御やバランス制御のために残ってきます。
その抑制を行っているのが中枢神経であるため、障害されれば反射が抑制できなくなります。
また反射の抑制ができなくなるだけでなく、筋緊張自体もコントロールできなくなります。
前角細胞以降を末梢神経と言いますが、そこへの中枢神経からの連絡が途絶え、筋緊張をコントロールができなくなります。また、感覚情報が中枢神経へ伝わらなくなることも、筋緊張のコントロールに影響を与えています。
今回は、この筋緊張を保つために抑制されてないといけない「伸張反射」という有名な反射と、関節をスムーズに動かすために不可欠な「Ⅰa抑制」という2つの反射をまとめます。
また、それとともに筋肉をストレッチした際に起こる「Ⅰb抑制」という反射をもう1つ一緒に紹介します。
どれも臨床場面と深いかかわりがある反射となります。
伸張反射
伸張反射は、「深部腱反射」としてよく知られる反射です。
深部腱反射とは例えば座った状態で膝の下を打腱器でコツンと叩くと、膝が勝手に伸びてくる膝蓋腱反射などのことです。
これで何がわかるのかというと、じつは運動麻痺が無いか調べる検査です。
ざっくり言うと、全く反応しないあるいは弱ければ弛緩性麻痺(末梢神経障害)、過剰に反応するようであれば痙性麻痺(中枢神経障害)というように判定します。
原始的に思うかもしれませんが、これは未だに使われる重要な指標です。
以下に深部腱反射を例に流れを具体的にまとめます。
①「筋肉が急激に伸展」される。(打腱器により腱を叩くことにより)
↓
②同時に骨格筋内部の「筋紡錘が伸展」されて興奮(活動電位が発生)
↓
③活動電位が「Ⅰa群求心性神経」を通り脊髄に向かう
↓
↓
⑤活動電位が「Aα運動ニューロン」を通り筋肉に再び向かう
↓
⑥最初に伸展された筋肉が「収縮」する。
これで何がわかるの?と思われるかもしれませんが、じつは伸張反射は身体にとって非常に重要な反射なんです。
伸長反射は「筋紡錘」という筋肉の長さを感知する感覚器により起こります。
具体的には筋が急に伸ばされたら、反射的に収縮させてコントロールします。
ということは筋紡錘が受けた感覚情報は常に脳に送られて、筋肉が過剰に伸ばされないように収縮させるのです。
つまりこれは筋緊張をコントロールしているということです。
脳卒中により伝導路が障害されると、この情報がうまく脳に伝わらない、あるいはうまく脳から筋に伝わらなくなります。
これにより筋緊張をどの程度コントロールしていいかわからなくなり、過剰になってしまったり、逆に脳から筋に命令が行かず筋が弛緩してしまったりします。
そしてもう一つ、骨格筋が「収縮」した場合に起こる反射があります。
これをⅠa抑制と言います。
Ⅰa抑制(拮抗抑制、相反性抑制)
Ⅰa抑制は筋肉が収縮した際、同時に筋紡錘が緩むことで起こる反射です。
例えば、肘を曲げたり、膝を曲げたり、ごく自然に筋を収縮させると常に起こっている反射です。
こう考えると非常に重要なことがわかると思います。
具体的にどんな反射かというと、肘を曲げるために筋が収縮した時、実は自動的に肘を伸ばす筋肉は弛緩していないと邪魔になってきます。
筋の名前を使えば上腕二頭筋が収縮するためには、上腕三頭筋は弛緩していないといけないという事です。
つまり主動作筋の収縮に対して、拮抗筋の抑制をさせる反射が「Ⅰa抑制」というわけです。
これが障害されるとどうなるかというと、わかりやすく言えばスムーズに動けなくなります。
以下にⅠa抑制の流れをまとめていきます。
①随意的に筋肉(骨格筋)を収縮する。
↓
②同時に骨格筋内部の「筋紡錘が緩んで」興奮(活動電位が発生)
↓
③活動電位が「Ⅰa群求心性神経」を通り脊髄に向かう
↓
④脊髄で「抑制性介在ニューロン」を経由してシナプス伝達(2シナプス反射)
↓
⑤その結果、拮抗筋に向かう「Aα運動ニューロン」を抑制する
↓
⑥拮抗筋が「弛緩」する。
伸張反射との違いは、主動作筋ではなく「拮抗筋に働く反射」だということです。
伸張反射では伸張された筋そのものが、収縮します。
しかしⅠa抑制では、収縮した筋が緩むのではなく、拮抗筋を緩めるという反射です。
そして、じつはこの際、同時におこる反応があります。
筋紡錘はじつは、常に一定の張りがなければ筋の長さを感知できません。
そのため収縮により縮んでしまった場合、張りをもたせるために引っ張る必要があります。
この筋紡錘自体の調節を行うのが、Aγ運動ニューロンと呼ばれるものです。
これは筋紡錘に付着する錘内筋に作用して、筋紡錘の調節を行います。
じつは筋肉(骨格筋)が収縮する際、常にこのAγ運動ニューロンが筋紡錘の調節を行わないといけません。
Aα運動ニューロンにより筋が収縮した情報を伝えるとき、必ずAγ運動ニューロンによる筋紡錘の長さの調整が必要になるということです。
このメカニズムは「α-γ連関」といわれ、常に筋肉が収縮するたびに起こる重要な機構として有名です。
これがうまくいかなくなると、筋紡錘は筋肉に長さがわからず、筋緊張は調整されません。
その結果、思ったように動けなくなってしまうのです。
そのため一般的にイメージされる筋緊張の異常と深く関わるというわけです。
Ⅰb抑制(自原抑制)
最後に、もう一つ有名な「Ⅰb抑制」という反射をご紹介します。
これは先ほどの2つの反射とは違い、「筋紡錘」は関わらない反射となります。
このⅠb抑制は名前こそ似ていますが、全くメカニズムが違います。
このⅠb抑制では腱の中にある「腱紡錘」が主役になってくるのです。
腱紡錘は、筋紡錘と同じように腱に加わる張力を感知します。
そして、腱が伸張されすぎているなと感じると、その腱が付着している筋を緩め腱の伸張負荷を減らそうとします。
要は腱が伸ばされた時に、切れないように守る反射です。
今までのように筋緊張に関わる反射というよりは、腱の防御機構として働きます。
以下にⅠb抑制の流れをまとめていきます。
①腱が強い力でゆっくりと引き伸ばされる
↓
②腱紡錘が伸張されて興奮。(活動電位が発生する。)
↓
③活動電位が「Ⅰb群求心性神経」を通り脊髄に向かう
↓
④脊髄で「抑制性介在ニューロン」を経由してシナプス伝達(2シナプス反射)
↓
⑤その結果、伸ばされた腱に付着する筋に向かう「Aα運動ニューロン」を抑制する
↓
⑥腱に付着する筋が「弛緩」する。
ポイントとなるのは、まずゆっくりとした腱の伸張に反応するということです。
そして、Ⅰa抑制のように拮抗筋に作用するのではなく、腱に付着している筋そのものに作用して抑制するということです。
その点は暗記する上では、伸張反射に似ているとも言えます。
伸張反射とⅠb抑制は同名筋に作用します。
一方、Ⅰa抑制は拮抗筋に作用します。
そしてもっともイメージしてほしいのはⅠb抑制はストレッチを実施している時の状況だということです。
ストレッチで徐々に腱に伸張刺激が伝わることで、筋肉が緩んでくるというのはまさにこのⅠb抑制によるものです。
治療手段としてよく使われるストレッチはⅠb抑制が深く関わっています。
なのでⅠb抑制=ストレッチのイメージで覚えてしまいましょう。
Ⅰa、ⅠbとかAα、Aγって何?
伸長反射、Ⅰa抑制、Ⅰb抑制などを理解しようとするとき出てくる、Ⅰa、ⅠbとかAα、Aγって何なのでしょうか?
これらはⅠa、Ⅰbなどは「数字式分類(Lioyd-hunt分類)」、Aα、Aγなどは「文字式分類(Erlanger-gasser分類)」といわれる分類の用語を使っています。
これらは、「中枢神経(伝導路)」を通った後、主に運動神経であれば前角細胞、感覚神経であれば後角細胞を境にして「末梢神経」に変わる(例外もあります)のですが、この末梢神経の神経線維を役割ごとに分類した名前です。
生理学では末梢神経を運動神経と感覚神経に分けた後、詳細をこれらの分類で表現します。教科書などでは当たり前にこれらの用語で表現されるため、生理学を理解する時必ず整理しておかなければ混乱してきます。
数字式分類(Lioyd-hunt分類)
これは「感覚線維」のみを分類したものです。なので求心性(上行性)の神経はこちらの分類で表現することが一般的です。
具体的な内容は以下となります。
Ⅰa・・・筋紡錘
Ⅰb・・・腱紡錘
Ⅱ・・・触覚・圧覚
Ⅲ・・・痛覚・温冷覚
Ⅳ・・・痛覚
これらの感覚に対応した神経線維を、左に表したⅠ~Ⅳの数字に置き替えて表現するわけです。
これの覚え方は様々ありますが、一例を紹介しておきます。
「筋腱触って痛い・熱い!痛い!」
と覚えましょう。
筋→ Ⅰa・・・筋紡錘
腱→ Ⅰb・・・腱紡錘
触って→ Ⅱ・・・触覚・圧覚
痛い・熱い→ Ⅲ・・・痛覚・温冷覚
痛い→ Ⅳ・・・痛覚
という感じで、Ⅰ~Ⅳに対応しています。
文字式分類(Erlanger-gasser分類)
こちらは運動・感覚の両方が含まれた分類です。しかし求心性(上行性)は数次式分類があるので、遠心性(下行性)の神経を主に表現するときに使われていることが多い傾向があります。
おおまかにはA~Cの文字で分類していきます。
この内Aは詳細にα~δまでの4つに分けられています。
具体的な内容は以下となります。
A |
α |
・錘外筋の運動(運動) ・筋紡錘・腱紡錘(感覚) |
β |
・触圧覚(感覚) |
|
γ |
・錘内筋の運動(運動) |
|
δ |
・温痛覚(感覚) |
|
B |
・自律神経節前線維 |
|
C |
・自律神経節後線維 |
これを見てわかるように運動神経が含まれているだけではなく、自律神経も含まれた分類となります。
Aα、Aγは運動神経を含むためよく使われます。
Aαは「錘外筋の運動」つまり骨格筋の運動神経を表現するのに使い、Aγは「錘内筋の運動」つまり筋紡錘の長さの調節をする運動神経を表現するのに使います。
Aαの「筋紡錘・腱紡錘」と書いてある感覚の部分はⅠa、Ⅰbに対応しているためあまり使うことはありません。
またβはⅡと対応し、δはⅢと対応しているため、これらも数字式分類を主に使うのであまり使われません。
そしてCもⅣと対応しているので使いません。
ということは、運動線維の表現としてAαとAγを理解しておいて、残りは数字式分類を覚えておけば生理学的な文章で使われる分には十分理解できるということです。
まずはこれらを中心に覚えていきましょう。
まとめ
今回は「伸長反射」、「Ⅰa抑制」、「Ⅰb抑制」という三つの反射と、それらを理解するための末梢神経の生理学的分類をまとめてみました。
これらを理解しておけば、臨床で役に立つばかりではなく、生理学の他の単元の理解を深める際にも武器になります。
とくに筋紡錘の詳細を理解する際などは重要になります。
また伝導路を理解したときに、その先にこれらの末梢神経線維に繋がり、最終的に対応した感覚器に繋がることを理解できてくれば、神経系の範囲の全体像が見えてきます。
この機会にぜひ整理してみて下さい。
【歩行分析】歩行周期の覚え方。ポイントを絞って簡単にまとめました。
歩行周期は理学療法士であれば必修で、柔道整復師、鍼灸師でもリハビリテーション医学で一部学習すると思います。
しかし、臨床で活用するためには暗記する項目が多く、なかなか理解が難しい分野だと思います。
そこで今回は理解の助けになることを祈って要点をまとめてみました。
苦手な歩行分析のポイントをこの機会に整理してみましょう。
- 歩行周期とは
- 歩行時に必要な可動域
- 立脚相は特に重要
- イニシャルコンタクト(IC)初期接地
- ローディングレスポンス(LR)荷重応答期
- ミッドスタンス(Mst)立脚中期
- ターミナルスタンス(Tst)立脚後期
- まとめ
歩行周期とは
歩行周期とは立脚相(支えてる時期)と遊脚相(振り出している時期)からなり、片側の脚が接地してから立脚と遊脚を経てもう一度接地するまでの区間をいいます。
従来の名称とランチョ・ロス・アミーゴ式の二つの表現方法があり、現在ではランチョ・ロス・アミーゴ式が一般的です。
(ランチョ・ロス・アミーゴ式とは臨床歩行分析のメッカと言われるロサンゼルスのランチョ・ロス・アミーゴ国立リハビリテーションセンターで考えられた名称です。)
また、立脚相を5つの場面、遊脚相を3つの場面に分けて表現します。
これらの場面はそれぞれ重要な役割を持ち、これらの場面を経て歩行が達成されることを「正常歩行」といいます。
歩行分析では基本的に、この正常歩行でそれぞれの場面が役割を果たせているかを基準として評価していきます。
役割を果たせず、異なった形態で歩行していることを逸脱歩行といい、どの場面で逸脱しているのか正常歩行と比較することで判断します。
そのため、初学者はまず正常歩行について熟知することが、歩行分析する力をつける第一歩となります。
以下に立脚相、遊脚相それぞれの場面の名称をまとめます。
従来の表現 |
ランチョ・ロス・アミーゴ式 |
(立脚相) |
|
踵接地 |
初期接地:IC |
足底接地 |
荷重応答期:LR |
立脚中期 |
立脚中期:Mst |
踵離地 |
立脚終着:Tst |
足指離地 |
前遊脚期:Psw |
(遊脚相) |
|
加速期 |
遊脚初期:Isw |
遊脚中期 |
遊脚中期:Msw |
減速期 |
遊脚後期:Tsw |
歩行時に必要な可動域
ではそれぞれの場面では、どんな姿勢になるのでしょうか?
簡単にですが、場面ごとの関節の角度を整理してみました。
なかなか角度だけを見て想像できませんが、それぞれの場面での関節角度は意味があり後々おおまかに覚えておく必要があります。
また、これらの関節可動域を満たさない場合、各場面の正常な肢位がとれない原因の一つとなります。
|
股関節 |
膝関節 |
距腿関節 |
距骨下関節 |
中足趾節関節 |
IC |
屈曲20° |
屈曲5° |
中間位 |
中間位(軽度内反) |
中間位 |
LR |
屈曲20° |
屈曲15° |
底屈5° |
外反5° |
中間位 |
MSt |
中間位 |
屈曲5° |
背屈5° |
外反が減少 |
中間位 |
TSt |
伸展20° |
屈曲5° |
背屈10° |
外反2°に減少 |
伸展30° |
伸展10° |
屈曲40° |
底屈15° |
中間位 |
伸展60° |
|
ISw |
屈曲15° |
屈曲60° |
底屈5° |
中間位 |
中間位 |
MSw |
屈曲25° |
屈曲25° |
中間位 |
中間位 |
中間位 |
TSw |
屈曲20° |
屈曲0~5° |
中間位 |
中間位(軽度内反) |
伸展0~25° |
(『観察による歩行分析』訳者月城慶一・山本澄子・江原義弘・盆子原秀三 医学書院2005年p40~46)
立脚相は特に重要
急にたくさんの単語がでてきて、覚えられるかな?と思ってしまうのですが、この中にも要点があります。
ポイントは立脚相から理解を深めることです。
なぜなら片方の脚が立脚相になっている時、じつは反対の脚は遊脚相になります。
つまり、立脚相で支えられていないと、反対側の遊脚相が作れません。そのため多くはまず立脚相を評価していくことになります。
なので立脚相を集中的にまずは理解していきましょう。
今回はその中でも特に重要なIC~Tstの4つの場面に集中してまとめていきます。
また、歩行周期はそれぞれの場面が独立しているわけではなく、当然連続して起こっています。
なので暗記することが膨大に感じますが、場面ごとに記憶するのではなく、ストーリーで理解すれば覚えやすくなります。
以下にそれぞれの役割と、肢位のポイントをまとめていくので参考にして下さい。
イニシャルコンタクト(IC)初期接地
イニシャルコンタクト(以下IC)とは、歩行の最初に踵が地面に接する場面を言います。
遊脚相(振り出し)から地面に踵がついた瞬間に立脚相に切り替わりその瞬間がICです。
ICでは接地の衝撃に耐えることと、この後のLRで起こるheelrockerを効率よく働かせるための下肢のポジショニング作りが重要になります。
このときの下肢のアライメントは、「股関節屈曲20°」、「膝関節屈曲0~5°(ほぼ完全伸展位)」、「足関節中間位」、「距骨下関節外反位」です。
「股関節20°屈曲位」は遊脚期の振り出しの終了の位置が引き継がれた角度であり、仙腸関節と膝関節の安定に有利な肢位です。この肢位は大殿筋・ハムストリングスにより制御されます。
「膝関節伸展位」と踵骨外反の影響で起こる下腿内旋位の運動連鎖は靭帯による受動的な膝関節の安定性をもたらします。また大腿四頭筋や大殿筋上部の活動により膝折れを防ぎ、ハムストリングスにより反張膝を防ぎます。
「足関節中間位」は距腿関節のはまり込みによる安定化と、heelrocker機能の準備につながります。このために前脛骨筋などの足関節伸展筋の活動が重要になります。
これらにより衝撃吸収と下肢のポジショニングが達成されます。
もう少し詳細な内容は以下の記事を参考にして下さい。
ローディングレスポンス(LR)荷重応答期
ローディングレスポンス(以下LR)とは、イニシャルコンタクト(IC)の直後から始まり足底の全面が地面に接地するまでの時期となります。
LRではICで生じた衝撃を吸収することと、heel rocker機能によりスムーズに前方への推進を促すことが重要となります。
この時の下肢のアライメントは、「股関節屈曲20°」、「膝関節屈曲15~20°」、「足関節底屈5°」、「距骨下関節外反位」です。
「股関節20°屈曲位」はICからの延長で生じており、前方に崩れるのを防ぐために大殿筋の収縮が必要になってきます。
「膝関節15~20°屈曲位」は衝撃吸収で最も重要となり、heel rocker機能と連動して起こります。
この膝関節屈曲の制御のために大腿四頭筋の収縮が重要になります。
「足関節5°底屈位」は前脛骨筋により制御され、同時に下腿前傾が起こります。
これがいわゆるheel rocker機能であり、この下腿前傾により膝関節屈曲が誘発されます。
この一連の動作により衝撃吸収だけではなく、前方への推進を促します。
もう少し詳細な内容は以下の記事を参考にして下さい。
ミッドスタンス(Mst)立脚中期
ミッドスタンス(以下Mst)とは、ローディングレスポンス(LR)の後に起こり、膝関節・股関節が鉛直配列に近づき身体重心が最も上方に持ち上がる時期です。
Mstでは下腿の前傾を制御し安定した立脚を維持することと、身体重心を上方に持ち上げることが重要となります。
この時の下肢のアライメントは、「股関節屈曲0°」、「膝関節屈曲5°」、「足関節背屈5°」、「距骨下関節外反位(LRより減少)」です。
「股関節中間位」は反対側の振り出しと股関節伸展モーメントにより受動的に起こります。
前額面では外転筋群と大内転筋により骨盤の外側移動の制動と、膝関節の安定がなされ荷重が乗ってくる下肢を制御し安定した立脚を可能にします。
「膝関節5°屈曲位」はほぼ伸展位であり、反対側の振り出しと膝関節伸展モーメントにより受動的に起こります。ただし前半では大腿四頭筋による膝関節安定化が必要になります。
「足関節5°背屈位」はLRでの5°底屈位から下腿が前傾した結果であり、下腿三頭筋の制御が必須になります。これにより下腿・大腿の受動的伸展を制御し安定した立脚が可能となります。
これがいわゆるankle rocker機能であり、前方への推進力を適切にコントロールするメカニズムです。
もう少し詳細な内容は以下の記事を参考にして下さい。
ターミナルスタンス(Tst)立脚後期
ターミナルスタンス(以下Tst)とは、ミッドスタンス(Mst)の後に起こり、股関節伸展と共に足関節では踵が浮き上がり、いわゆる「蹴り出し」が起こる時期です。
Mstで身体重心が最も上方に持ち上がった後、Tstでは下降してくる身体重心持ち上げるために踵を浮き上がらせ、つま先立ちになることで蹴り出します。
それによりフットクリアランスが保たれ反対側が適切に初期接地(IC)することができます。
Tstでは前方へ加速する身体重心にブレーキをかけることと、下降してくる身体重心を上方修正し、推進する方向をコントロールすることが重要となります。
この時の下肢のアライメントは「股関節伸展20°」、「膝関節屈曲5°」、「足関節背屈10°」、「距骨下関節外反位(Mstよりさらに減少)」です。
「股関節20°伸展位」は股関節伸展モーメントにより受動的に起こり、矢状面状上では大腿筋膜張筋により制御されます。前額面上では小殿筋と大腿筋膜張筋が制御します。
「膝関節5°屈曲位」はMstから引き続きほぼ伸展位を維持します。筋活動は必要ありません。
「足関節10°背屈位」は蹴り出しにより起こります。この際、下腿三頭筋の最大筋収縮がおこり踵を持ち上げます。
これがいわゆるforefoot rockerであり、身体重心の上方修正と、推進方向のコントロールを可能とします。
もう少し詳細な内容は以下の記事を参考にして下さい。
まとめ
今回は歩行周期についてポイントをまとめてみました。
歩行周期は立脚相から遊脚相までの一連の流れで、一側が立脚相のとき反対側は遊脚相となります。
つまり、片脚が支えている時反対側は振り出されているわけです。
重力がある以上、どうしても支える足が安定した歩行のために重要になります。
たくさん暗記する項目があり最初は混乱しますが、導入としてまずは立脚相の要点を覚えることがおすすめです。
その際、前後のつながりを意識しながら覚えていくと、なぜその姿勢になるのか理解しやすいためおすすめです。
おそらくこの記事を読んでくれた方は何かしら歩行についての書籍をお持ちだと思いますが、以下の書籍では簡潔に詳細にまとめてくれていますので紹介しておきます。
しっかり理解したい方はぜひ活用してください。
【参考文献】
柔道整復師、理学療法士を経験して思うこと
今回は柔道整復師と理学療法士の2つの資格で仕事をしてみて感じたことをもとに、両資格の特徴を書いてみます。
この2つの資格は一般的に似ていると言われていますが、全く専門が違います。
業務はたしかに一部重なりますが、目的が違うのです。
今回、簡単に両資格の違いを書いてみます。
柔道整復師、理学療法士とは
ざっくりまとめると、柔道整復師は主に整骨院で働き、理学療法士は主に病院で働く仕事です。
しかし、現在は職域が広がり両資格とも福祉の現場をはじめ様々な場所で活躍しています。
簡単に違いを書くと、柔道整復師は痛みや動きにくいなどの「症状に対する治療」をすることが多いのに対して、理学療法士は日常で困る動作についていわゆる「リハビリ」をします。
理学療法士も「症状」には介入しますが、それは手段であり目的ではありません。
これは医療の現場において、症状には医師が主として対応しているからという側面があります。というのも病院ではより重度の疾患が多く、手術や投薬などの治療と並行してリハビリを行うからです。
ただ、理学療法士も外来や訪問など場面が変われば柔道整復師に近い業務もこなします。
このような場面では、患者さんのリピートを意識する必要があり、満足度について考えなければいけません。つまり症状の緩和や場合によっては慰安の要素(会話も含めて)に向き合わなければいけません。
またお客様としてサービスの観点も必要になってきます。
なので柔道整復師と理学療法士は場面によって業務が重なるという事実があります。
しかし、お互いに専門が違うため関わる上で目的は全く違うものとなります。
柔道整復師の治療と理学療法士のリハビリとは似て非なるものなのですが、それはまた別の記事で紹介します。
今回は、それぞれの資格の強みについて書いていきます。
理学療法士の強み
理学療法士は福祉の現場でも活躍しますが、養成校では医療での関わりを主として勉強します。
これが柔道整復師との違いとしてまず第1に挙げられる点だと思います。
理学療法士は、医療現場で連携して仕事をするため、常に医療従事者間での共通言語を求められます。
柔道整復師では、そのような教育は少なく、また現場でもあまり意識されていないのが現実です。
共通言語を用いることで、様々な書類を作成することができ、他職種との連携においてとても強みになります。
また根拠に基づいて治療をすることが求められるため、ある程度の能力の平均化が図られていると言えます。
これは施術者全体の質の向上につながっており、安心して施術を受けやすいと言えるでしょう。
理学療法士は医療現場でのリハビリをルーツとした資格なので良くも悪くも安定しています。
柔道整復師の強み
柔道整復師では、開業を目指して入学する人が多く、個人の行動力の高さに強みがあります。
先程書いたように、他職種と連携することが苦手である反面、個人で自営することを目的とするためバランスよく治療以外のマネジメントの視点を持っています。
それ故に、道をそれてしまう施術者が増えてしまい、以前より施術者としては質が下がってしまったことが残念です。
しかし、医療ではなかなか介入しきれないところで活躍することができる点がこの資格の強みです。
しっかり勉強している施術者であれば患者さんが本当に求めている、丁寧な関わりができます。
ある意味、医療的介入のような目的にしばられない点が強みだと思います。
より身近な立場で細やかなサポートができる反面、医療のように安定した内容が担保されているとは言えず、施術者ごとのレベルがばらばらという点が特徴です。
安心して施術を受けられるのは?
どちらの資格も、個人差はどうしてもあり、質にばらつきがあるのは事実です。
レベルの高い施術者がいれば、残念ですが意識の低い施術者も存在します。
しかし、国家試験を通過しているという点で一定の関門を超えてきています。
この意味ではどちらも一定の質が保たれています。
この点を踏まえて、あえてどちらかというと理学療法士となるでしょう。
その理由として、理学療法士の方が医学的な知識のレベルは高い点が挙げられます。そもそも、学ぶ単位数が、理学療法と柔道整復師では違うのでこれは仕方がありません。
理学療法士は4年がベースのカリキュラムなのに対し、柔道整復師は3年ベースなのです。
また、理学療法士は実習という何ヶ月もの長期の実地研修がある点も大きいです。
また理学療法士はクラスの半分近くは落第することもザラで、国家試験にたどり着くまでにかなりふるいにかけられます。これは柔道整復師の養成校では考えられません。
以上の点で、理学療法士の方が質としては安定していると言えるでしょう。
しかし、両資格とも卒業してからが本当の勉強です。
そこから努力した人としない人では差が生まれるため、個人のレベルによって当たり外れがどうしてもあると思います。
まとめ
柔道整復師と理学療法士は患者さんとの関わりが深くなる職種です。
そのため、患者さんとしては信頼できる施術者に治療してもらいたいと思うものです。
しかし、両資格とも一定のレベルは担保されているものの個人の資質が大きいと言わざるを得ません。
今回はその上で、両資格の強みや背景をまとめてみました。
まだまだ認知度が高くない両資格を知るきっかけになれば幸いです。