座位について考えてみました。正座、あぐら、しゃがみ位に必要な関節可動域は?
日常生活では様々な座り方がみられます。
日常では「座る」という場面多く、また長時間にわたってその姿勢を保持することも多いので重要な姿勢であるといえます。
これらを達成するにはどれくらいの関節可動域を確保すればよいのでしょうか?
数ある座位姿勢の中で、今回は正座・あぐら・しゃがみ位にどれくらいの可動域が必要なのか、学生時代に実測してみた結果をもとに考えてみます。
正座
自分の実測では股関節屈曲100°、膝関節屈曲150°、足関節底屈60°となりました。(この数値自体は参考になりませんので注意してください)
この測定をしたことで、正座では特に膝関節屈曲、足関節底屈で大きな可動域が必要となることがわかりました。数値自体は参考になりませんが、測ってみてこのことに気づいたことが大事だと思います。
文献では吉本ら¹⁾によると、股関節屈曲61.7±5.2°、膝関節屈曲150±5.9°が正座に必要との報告もあり、股関節屈曲に関してはもう少し浅くても可能ということがわかりました。
あぐら
自分の実測では股関節外転30°、股関節外旋80°、膝関節屈曲130°、足関節底屈20°となりました。(この数値自体は参考になりませんので注意してください)
この結果から、あぐらでは特に股関節外転・外旋、膝関節屈曲で大きな可動域が必要であることがわかりました。
文献では吉本¹⁾らによると股関節外転17.5±5.7°、股関節外旋14.7±6.5°、膝関節屈曲130±13.4°があぐらに必要との報告がありました。
しかし、リラックスした肢位であぐらをとるには思っているより股関節外転・外旋が必要であることが実測してみてわかりました。
しゃがみ位
自分の実測では股関節屈曲140°、膝関節屈曲150°、足関節背屈50°となりました。(この数値自体は参考になりませんので注意してください)
しゃがみ位では股関節屈曲、膝関節屈曲、足関節背屈ともに大きな可動域が必要となりました。特に股関節屈曲では正座・あぐらと比べても大きな関節可動域が必要でした。
また、数名で測定した結果を比べてみたところ足関節の可動域によって姿勢が違うことに気づきました。
大きく2種類の方法に分かれ、足底をすべて地面に接地する方法と、つま先のみ接地する方法に分かれました。このうち前者ではかなりの筋力とバランス能力を必要とすることもわかりました。
文献では菅原ら²⁾よると股関節屈曲134~139°、足関節21~25°必要との報告があり、股関節・膝関節の可動域により足関節の可動域に差がでることや、左右差がみられる例も多いとの内容も示されていました。
しゃがみ位の重要性
この中でしゃがみ位は生活上特に重要になると考えられます。
それはあぐらや正座と違い、姿勢の移行の際に必要な場合があるためです。
例えば起床時に、仰臥位あるいは側臥位の状態から上半身を起こし、長座位となり、そこから立位に体位変換する際にその間の肢位としてしゃがみ位を利用します。
また台所のシンク下の開きから調理器具を取る際など目線より低い位置での作業にも必要となります。他にも和式トイレでは必須となります。
まとめ
今回、3つの座位の特徴について考えてみました。実測してみて一番の気づきは、かなり個人差があるということです。同じ座り方でも、必要な関節可動域は人によって違いがありました。
しかし、大きく可動域がいる部位に関しては、それぞれ一致しており、それを把握してリハビリを進めることは重要だと思いました。
文献からの情報も大切ですが、自分で実際に経験してみることも大切かもしれません。
参考:
1)吉本洋一:下肢のROMとADL.理学療法学,第15巻第3号,p247~250.
2)菅原真由美:他.女性のしゃがみ姿勢と下肢関節可動域との関連.形態・機能,第3巻第2号,p43~49.