リハログ

リハログ

はじめまして。yusukeです。柔道整復師/鍼灸師/理学療法士 3つの資格を取得。各種養成校の学生向けに「リハログ」を運営しています。30代一児の父として頑張っています。

【柔道整復師】鑑別とは?初診で確認すべき項目を考えてみた

f:id:r154018:20180315120835j:plain

整骨院では初回にどのようなことを確認しておくべきでしょうか。

今回は整骨院において、初診で「最低限これは確認しないといけない」と思うことをまとめてみました。

 

整骨院の立場

じつは、というか当たり前ですが柔道整復師には診断権はありません。診断名をつけられるのはあくまで医師のみです。

しかし、柔道整復師は独立開業可能です。医師による診断下で施術を行うわけではありません。なので診断権はありませんが、柔道整復師は自身で患者さんの状態を判断しないといけないんです。

しかも柔道整復師は保険を適応する際は傷病名というのをつけないといけません。

ですが医師と違って、柔道整復師の保険適用範囲は骨折、脱臼、打撲、捻挫、坐傷のみです。この中から何かしら当てはまる傷病名を選ばないといけません。

そしてこれらに当てはまらないもの、すなわち自身の業務範囲を超えるものは健康保険での施術以外の選択をしなければなりません。

重症であれば適切な医療機関に案内することが求められます。軽症であれば保険外での施術となります。

この柔道整復師が行う「判断」は診断ではないため、「鑑別」と表現します。これは患者さんに適切な施術を行うためには必ず必要です。

そのため柔道整復師は初診で「鑑別」を行う必要があると言えます。

鑑別の流れ

ここは様々な考え方があると思いますが、僕は上記のような整骨院の特性を考えると①保険適応範囲なのか②病院に紹介するべき症例なのかの2点を最初に判断するべきだと考えます。

そのために、まず最初は「主訴」と「受傷機転」を聴取する必要があります。

そこから「外傷かどうかの判断」と「重症度」を想定します。(※整骨院における外傷とは骨折、脱臼、打撲、捻挫、坐傷です。それ以外は保険適応外のため医療機関での診察を促す必要があります。)

次に問診から想定した仮説を確かめるために、局所の視診、触診、関節可動域や自動での動作の確認を行います。

ここで、疼痛、熱感、腫脹、発赤といった炎症の徴候を確かめます。

同時に圧痛などから損傷組織もできるだけ明確に特定します。

また、重篤な外傷を鑑別するために、骨折・脱臼の有無は特に注意します。例えば「骨折」では軸圧痛や局所の疼痛、著明な腫脹や軋轢音など特徴的なものがみられないかを確認します。「脱臼」では骨頭の位置異状がないか、関節可動域制限がないかなど特徴的なものを確認します。

なぜこのように外傷に絞って確認するのかというと、柔道整復師の保険が適応できる範囲なのかどうかを判断しないといけないためです。

その他に確認するべきこと

ここで、もう一つ重要なことがあります。それが神経徴候の有無の確認です。

腰部痛や頸部痛、肩部痛、手指のしびれなども整骨院にはよく相談にこられます。これらを適切に判断し、医療機関への受診を促すことも重要です。

これらの原因は椎間板ヘルニアや頚椎症・腰椎症といった脊柱の構造的な問題による場合もあれば、末梢の問題である「絞扼性の神経障害(entrapment neuropathy」の場合もあります。例えば胸郭出口症候群手根管症候群です。

このような末梢神経の問題は、患者さん自身では外傷との区別は難しいため整骨院に相談されるケースが多い事を把握しておかないといけません。これらは急性的な発症のように見えても、スポーツや仕事での繰り返しの作業が原因です。つまり多くの場合、保険適応はできません。

また、神経の問題ではありませんが、このような繰り返しの作業による「腱鞘炎」や「腱や靭帯の付着部症(enthesopathy)」もよくみられます。

これらは適切に判断し、医療機関への受診を促す必要があります。また保険適応外で整骨院での対応が必要な場合もあります。

医療機関へ促すのがなぜよいかというと、医師による診断があることで重篤な疾患の見落としが無くなるからです。また、医療機関と密に連絡をとっていると、柔道整復師からの紹介状に返事をいただけたり、指示をいただけたりする場合もあります。

そのような関係ができあがれば患者さんにとってよりよい選択肢を提供できるのではないでしょうか。

また、患者さん自身も高齢者であれば地域で様々な職種のサポートを受けていることも少なくありません。柔道整復師としても整骨院ですべて判断し抱え込むのではなく、他職種と連携し情報を共有していくことが大切だと思います。

医師だけでなく他職種に認識してもらうことで、他職種からの紹介があったり結果的には患者さんにより知ってもらうことにもつながるのではないかと考えます。

肩こり・腰痛は保険適応できない

また上記のような症状のほかに肩こり・腰痛もどうしても整骨院への相談が多いと思います。しかし、肩こり・腰痛であっても上記のようなプロセス(重篤な疾患ではないか、保険適応できるのかの確認)を行うことは同じです。

ただ、ここで重要なのは受傷機転がない慢性的なものは保険適応できないということです。

また、慢性的なものでも、あまりに長期にその痛みを抱えている場合は筋・筋膜性の腰痛以外も疑わなければいけません。例えば神経徴候の有無を確認し椎間板ヘルニアなどの疑いが無いのかなどを徒手検査(筋力・感覚・反射)で確認して、医療機関に紹介することが必要です。

その上で整骨院で対応するのであれば、原因追究し保険適応外で施術すればいいと思います。

保険適応の範囲を説明することと、整骨院でできることを患者さんに伝え、患者さん自身に選択してもらうことが初回に一番大切なことではないでしょうか。

最近ではこのような症状にも保険適応でマッサージしてしまう院がありそれが問題となっています。この問題は上記のようなプロセスを経ていないことが原因ではないかと思います。

保険外での施術

保険外で施術する場合は、上記のプロセスを経た後、患者さんの要望を聞き困っていることを聴取することが大切だと思います。治るとは、どのような状態なのかは患者さんによって違います。それにより目標を立てて、ゴールを決めないといけません。

またその上でこちらのプランを提案するべきだと思います。例えば、どれくらいの期間でどの程度回復を見込めるのか。どの程度通院して、費用はどれくらいを想定してもらわないといけないのかをお伝えしないといけません。

 まとめ

柔道整復師で初回に考えることをまとめてみました。

この内容については様々な意見があると思いますが、個人的な意見ですのでご容赦ください。

最近では、手技を勉強している柔道整復師が多いと思います。しかし、いかなる手技でも保険適応で行う場合は処置の後の後療法にあたります。

つまりどのような手技であろうと柔道整復師として保険適応で施術するなら、鑑別能力は必要だと思います。鑑別能力があった上で、患者さんにあった施術を適切に提案することが理想ではないでしょうか。他職種との連携という意味でも重要だと思います。

しかし、そういった鑑別能力を磨くには整形外科クリニックなどで症例をたくさん経験して、医師の診断下での施術経験を積まないと難しいと思います。その部分で現実的には柔道整復師としての卒後教育の場が少ないという問題があると思います。

pthari.hatenablog.com

また、経営の面でも厳しい現実があります。しかし、柔道整復師として本来の業務を大切にしつつ発展していくことが重要ではないかと思い今回考えてみました。

長い内容にお付き合いくださりありがとうございます。