柔道整復師は必修。骨折の治癒過程。
今回は「骨折の治癒過程」についてまとめてみたいと思います。
この過程がうまくいかず起こってしまうのが偽関節、遷延治癒、変形癒合などです。
これらについては以下の記事に書いています。
一次性骨折治癒・二次性骨折治癒
骨折の治癒には一次性骨折治癒と二次性骨折治癒という二つがあります。
両者の違いは「仮骨を形成するかどうか」です。
よくある誤解が一次性骨折治癒の後に二次性骨折治癒がおこるというものですが、両者は別の治癒過程をそれぞれ表しています。以下にまとめます。
一次性骨折治癒
「仮骨を形成せず」に骨折部が治癒する治癒形式です。
両骨折端が解剖学的に正しく整復されて、強固に固定された時に起こります。
仮骨形成(-)ということがポイントです。
二次性骨折治癒
逆に「仮骨を形成して」癒合する治癒形式です。
骨折部の血腫の中に肉芽が形成されて、そこから仮骨が起こって骨折端が連結されます。そのままでは弱いですが、その後、強度のある骨として再造形されていきます。
骨折端の隙間に多少でも血腫がある場合には、常にこの過程を経て骨折が癒合します。
骨折の治癒過程の流れ
以下に二次性骨折治癒の過程をまとめます。
①炎症期 (骨折後24~48時間)
骨折の起こった直後から「仮骨形成が生じるまで」の期間です。
この期間には様々な生体の反応が起こります。
まず骨折直後には骨や血管が離断され、出血やリンパ液が遊出して「血腫」を形成します。同時に、その周りの軟部組織に浮腫ができます。
さらに血液中の線維素が線維素網を作ります。これが肉芽組織の土台になります。
その後止血され、血腫中の血液は凝固して両骨端を満たします。
骨折部の出血は24時間で止血しますが、浮腫・血腫は炎症反応を示します。
以上のような環境が形成されれば、血管芽細胞が入ってきて毛細血管の基礎ができるとともに、準備されていた線維素網で線維素と結合して、「肉芽組織」が作られます。肉芽組織には、膠原線維も加わります。
炎症期についてまとめると、概ねの流れとしては血腫形成→肉芽組織形成になります。この先の過程では、ここから軟骨・骨が形成されていきます。
参考:全国柔道整復師学校協会・教科書委員会:会柔道整復学 理論編 改訂第4版,南江堂.2004.
②修復期 (骨折後1週間~4週間)
1)仮骨形成期:1週間後から
骨芽細胞により「仮骨形成」が始まり、骨細管ができて骨の栄養を供給します。
また、3週間後くらいから、骨髄腔の組織も結合します。
その後、仮骨に石灰塩が沈着して「類骨」になります。
2)仮骨硬化期:4週間後から
4週間を過ぎると、仮骨は成熟した骨梁となって新しい骨皮質を作ります。また、石灰塩も2~3倍増量して骨化が進みます。
この時期には、骨形成が急速に行われていくと同時に炎症反応は消退します。
参考:全国柔道整復師学校協会・教科書委員会:会柔道整復学 理論編 改訂第4版,南江堂.2004.
③再造形期(リモデリング期)
骨折部の周りにできた硬化仮骨は、日常生活に視床のない形に順応します。
この変化を「自家矯正」といいます。
ちなみに骨折の分類についての記事で書きましたが、捻転転位ではこの自家矯正がうまくいかず変形を残します。
この過程を経て骨折の治癒は完了します。
参考:全国柔道整復師学校協会・教科書委員会:会柔道整復学 理論編 改訂第4版,南江堂.2004.
まとめ
今回は骨折の治癒過程についてまとめてみました。
正常な治癒過程が働かない場合、偽関節、遷延治癒、変形癒合などをきたしてしまいます。
参考:
内田淳正:標準整形外科第12版,医学書院.2011.
全国柔道整復師学校協会・教科書委員会:会柔道整復学 理論編 改訂第4版,南江堂.2004.