柔道整復師は必修。骨折の名称分類と治療原則。
柔道整復師の専門分野のひとつである「骨折」について整理していきます。
骨折の知識については以下の記事にも書いています。
今回は「骨折の名称分類」と「骨折治療の原則」についてまとめます。
骨折の名称にはたくさんの分類があり、とても混乱します。しかもやっかいなことに、どの分類もよく使用されます。
そのため今回は、分類を整理して骨折についての理解を深められるように、まとめてみます。
骨折の分類
骨折の名称について、一般的によく使われる分類は6種類あります。
①程度による分類
②外力の作用方向による分類
③骨折線の走行による分類
④骨折部と外界の交通による分類
⑤原因による分類
⑥部位による分類
以下それぞれ説明していきます。
①程度による分類
1)完全骨折
2)不完全骨折
3)不顕性骨折
参考:内田淳正:標準整形外科第12版,医学書院.2011.
完全骨折は骨の連続性が完全に断たれている骨折です。
それに対して、不完全骨折は、よくいわれる「ひび」が入った状態をいいます。不完全骨折では、骨の連続性は部分的にのみ失われています。(亀裂骨折や若木骨折、竹節状骨折などもこれに含まれます。)
不顕性骨折とは、レントゲンでは写らないけれど、じつは骨折している状態です。MRIなどで精査すれば骨折を証明できます。大腿骨近位部、脛骨近位部、上腕骨大結節などでみられるとされています。
②外力の作用方向による分類
1)屈曲骨折
2)圧迫骨折
3)剪断骨折
4)捻転骨折
5)裂離骨折
参考:内田淳正:標準整形外科第12版,医学書院.2011.
外力がそれぞれどのように加わったかで分類されています。
この内、裂離骨折とは筋肉の収縮によって付着部が引っ張られて起きる骨折です。
また、骨折を起こす外力には直達外力と介達外力があります。
直達外力は外力が加わった部分に骨折が生じます。それに対して介達外力は外力が加わった部分から離れた部位に骨折が生じます。
③骨折線の走行による分類
1)横骨折
2)斜骨折
3)螺旋骨折
4)粉砕骨折
参考:内田淳正:標準整形外科第12版,医学書院.2011.
骨折線がどんな走行をしているかで分類したものです。
この内、 ②の分類にあった捻転骨折は螺旋骨折になりやすいと言われています。
またこの粉砕骨折はよく複雑骨折と同義であると勘違いされますが全く違います。
粉砕骨折とは骨片がバラバラになった状態で、複雑骨折とは開放骨折といって皮膚を突き破っているものです。
④骨折部と外界の交通による分類
1)皮下骨折(単純骨折)
2)開放骨折(複雑骨折)
参考:内田淳正:標準整形外科第12版,医学書院.2011.
骨折部が皮膚を突き破っているかどうかの分類です。
開放骨折については臨床上重要で、Gustilo分類が有名です。
【Gustiloによる開放骨折の分類】
typeⅠ:開放創が1cm以下で汚染の少ない開放骨折。
typeⅡ:開放創が1cm以下ではあるが、広範な軟部組織損傷や弁状創を伴わない開放骨折
typeⅢ-A:広範な軟部組織の剥離や弁状創を伴うが、軟部組織で骨折部を被覆可能な開放骨折
typeⅢ-B:骨膜の剥離を伴う広範な軟部組織の損傷と、著しい汚染を伴う開放骨折
typeⅢ-C:修復を要する動脈損傷を伴う開放創
参考:内田淳正:標準整形外科第12版,医学書院.2011.
なぜこの分類が臨床上重要かというと、開放骨折は軟部組織損傷の程度によって初期治療が異なるからです。
⑤原因による分類
1)外傷性骨折
2)病的骨折
3)疲労骨折
4)脆弱性骨折
参考:内田淳正:標準整形外科第12版,医学書院.2011.
病的骨折とは、骨の局所的な病変による強度低下が基盤となって、通常では骨折が起きないような軽い外力で骨折してしまうものです。
疲労骨折とは、通常では骨折を起こさない程度の軽い負荷が繰り返されることで起きる骨折です。
脆弱性骨折とは、骨粗鬆症や骨軟化症により強度が低下した骨が、日常生活程度の負荷で骨折してしまうものです。病的骨折と似ていますが、原因が骨粗鬆症と骨軟化症に絞られています。
⑥部位による分類
1)骨幹部骨折、骨幹端部骨折、骨端部骨折
2)関節内骨折(骨軟骨骨折)
3)脱臼骨折
全国柔道整復師学校協会・教科書委員会:会柔道整復学 理論編 改訂第4版,南江堂.2004.
脱臼骨折とは脱臼に骨端部骨折を合併するものをいいます。また、関節内骨折とは関節包内での骨折になります。
骨折治療の原則
骨折治療の原則は①整復②固定③後療法(リハビリテーション)の3つです。
③は、柔道整復師では後療法、理学療法士ではリハビリテーションといいます。
柔道整復師では①や②を主に専門としており、理学療法では①②は医師が行い専門である③を中心に行うことが多いです。
しかし、現在ではスポーツ現場でも両者は活躍しており、その場合①②③すべての総合的な知識が必要となります。
【①整復】
観血的整復と非観血的整復があります。昔は柔道整復師が応急処置として徒手整復していることもありましたが、現在では麻酔下で医師が行います。
しかし、整骨院やスポーツ現場でも、医療機関と適切に連携するための知識として知っておく必要があります。
特に手術について進入路をよく理解しておくことは、術後のリハビリを担当する上で重要になります。
1)非観血的整復
・徒手整復
・介達・直達牽引
2)観血的整復
・手術療法
【②固定】
整復・固定についてはそれぞれ手術療法と保存療法に分けられます。開放性の有無や転位の程度などの条件で決定します。
1)保存療法(外固定)
・ギプス固定
・副子固定(シーネ固定)…etc
2)手術療法(内固定)
・プレート
・スクリュー
・k-wire
・髄内釘…etc
【③後療法(リハビリテーション)】
骨折の場合は多くの場合、元の日常生活を送れる程度に回復します。
そのためセラピストとしては、一次性機能障害、二次性機能障害を整理して、可能な限り元の状態に復帰できるようサポートします。主に二次性機能障害に対しての施術が中心となります。
一次性機能障害と二次性機能障害については以下の記事に書いています。
例としては、
拘縮・関節可動域制限予防として関節可動域訓練を実施したり、筋萎縮・筋力低下予防として筋力維持・増強訓練を実施したりします。
また機能面だけではなく、ADL訓練や歩行訓練などを行い元の日常生活へ復帰するサポートをします。
まとめ
骨折の分類は非常に多くあり、表現の仕方もたくさんあります。
しかし、これらすべて臨床ではよく耳にする用語です。。この機会にぜひ整理してみてください。
参考:
内田淳正:標準整形外科第12版,医学書院.2011.
全国柔道整復師学校協会・教科書委員会:会柔道整復学 理論編 改訂第4版,南江堂.2004.