国家試験頻出。小児の骨折まとめ。【柔道整復師・理学療法士】
今回は、小児の骨折についてまとめてみます。
小児骨折の特徴
小児の身体は、解剖学的・生理学的に成人と異なります。そのため、成人では起きないような問題も発生します。
例えば骨折では、骨端線があるため骨端線での離開が起きたり、骨の弾力性があることから若木骨折が起きたりします。
また、小児骨折は男児に多い傾向があります。
原因は、活発であるため外傷性、疲労性が多い傾向がありますが、病的骨折もその原因として考えておく必要があります。
年齢別の特徴としては
①分娩時:頭蓋骨、鎖骨、上腕骨、大腿骨の骨折が多い。
②生後一年以内:骨折は少ない。(歩きだしてからが骨折リスク高い)
③生後一年以降:手関節、前腕、肘の骨折が多い。
④幼児期以降:スポーツ外傷が多くなる。
⑤思春期以降:骨端線離開を起こしやすくなる。
となり時期によって起こりやすい骨折に偏りがあります。
小児骨折の種類
小児期に発生する骨折で主なものとは
①上腕骨顆上骨折
②上腕骨外顆骨折
③Monteggia骨折、Galeazzi骨折(脱臼骨折)
④大腿骨頚部骨折
⑤脛骨顆間隆起骨折
⑥脛骨粗面骨折
⑦Tillaux骨折
などです。
この中でも最も頻度の高い骨折は、「上腕骨顆上骨折」です。
小児では、高齢者に比べて上腕骨遠位端部の骨折が起こりやすくなっています。逆に高齢者では上腕骨近位端部や橈骨遠位端部で多いという特徴があります。
上腕骨顆上骨折とはこの上腕骨遠位端部骨折の一つです。
上腕骨遠位端部骨折の分類からまとめてみます。
上腕骨遠位端部骨折の分類
上腕骨遠位端部骨折には以下のような種類があります。
①顆上骨折…小児期に好発。一番多い
②内側上顆骨折…小児期・思春期に好発。
③外側上顆骨折
④通顆骨折
⑤内顆骨折
⑥外顆骨折…小児期に好発。
⑦小頭骨折
⑧滑車骨折
⑨複合骨折
このうち顆上骨折、外顆骨折は国家試験にもよく出題されます。
この二つの骨折で出題されるポイントとしては
1)上腕骨顆上骨折では内反肘が多く、正中神経、橈骨神経の損傷が多い。
2)上腕骨外顆骨折では外反肘が多く、遅発性尺骨神経麻痺が多い。
というところです。
上腕骨顆上骨折
5~10歳に多く起こり、転落・転倒などで肘関節を伸展した状態で受傷します。
この場合、伸展型骨折といいます。
ちなみに同じ受傷機転で上腕骨外顆骨折も起こります。
小児でも高齢者でも、転倒時に手をついて起こる骨折が多い傾向があります。
稀に屈曲位で強打して受傷しますが、この場合を屈曲型骨折といいます。
【骨折型による分類】
①伸展型骨折…骨折線は前下方から後上方に走り、遠位骨片は後上方に転位する。
②屈曲型骨折…骨折線は後下方から前上方に走り、遠位骨片は前方に転位する。
伸展型では、肘関節後方脱臼との鑑別が重要になります。顆上骨折ではヒューター線、ヒューター三角が乱れないという特徴があります。
ヒューター線とは上腕骨外側上顆と内側上顆、肘頭を結んだ線でのことです。肘を伸展していればこれらは一直線に並ぶのでヒューター線といい、肘を屈曲すれば肘頭の位置が変わり三角形を呈するのでヒューター三角といいます。
【合併症】
多い合併症は、前腕への血流障害によるvolkmann拘縮や急性コンパートメント症候群です。
合併症ついても国家試験ではよく出題されています。
【治療法】
原則は保存療法が選択されます。
ただし、神経損傷か血管損傷がある場合のみ観血療法の適応となります。
保存療法
①徒手整復法
②牽引療法…整復困難、固定維持困難、骨片転位が強い場合
③経皮的鋼線固定…骨折部の安定性が悪い場合
それ以外で国家試験に出題されやすい小児骨折
それ以外で国家試験に出題されやすといえば、脱臼骨折です。
脱臼骨折にはMonteggia骨折、Galeazzi骨折があり、これらの違いがよく出題されます。
この二つの脱臼骨折で出題されるポイントとしては
1)Monteggia骨折は尺骨骨幹部骨折+橈骨頭の脱臼、橈骨神経麻痺が起こりやすい。
2)Galeazzi骨折は橈骨骨幹部骨折+尺骨遠位の脱臼、尺骨神経麻痺が起こりやすい。
というところです。
Monteggia骨折
尺骨骨幹部近位1/3付近の骨折と橈骨頭脱臼を合併した脱臼骨折を言います。
手をついて転倒・転落した際に、前腕回内力が作用すると、橈骨頭が前方脱臼して起こります。橈骨の後方脱臼が起こることもありますが稀です。
橈骨神経麻痺、とくに深枝麻痺(運動枝)が生じやすいです。
【骨折型による分類】
・伸展型(前方型)…橈骨は前外方に脱臼する。
・屈曲型(後方型)…橈骨は後方に脱臼する。
このうち伸展型は、固定性が悪いので観血的に整復される事が多いです。
まとめ
今回は小児の骨折についてまとめてみました。
小児骨折では上腕骨顆上骨折・外顆骨折、Monteggia骨折、Galeazzi骨折が特に国家試験に出やすい傾向があります。
参考:
内田淳正:標準整形外科第12版,医学書院.2011.
全国柔道整復師学校協会・教科書委員会:会柔道整復学 理論編 改訂第4版,南江堂.2004.