【理学療法士】人工呼吸器(レスピレーター)ってどんなもの?気管挿管、気管切開、NPPVの違い。
「人工呼吸器」ってどんなものをいうのでしょうか?
人工呼吸器=レスピレーターともいいます。
僕はいまいち人工呼吸器ってどんなものか、はっきり分かりませんでした。
人工呼吸ってマスクみたいなものをつけるやつ?気管挿管とかは?いろいろ疑問がありました。
じつは一口に人工呼吸器といっても、気管挿管や気管切開に加えて、NPPVというマスクによるものもあったりします。これらはすべて人工呼吸器です。
今回は人工呼吸器ってどんなものなのかまとめてみます。
- 人工呼吸器ってどんなもの?
- どんな人が適応になるの?
- どんな経路があるの?
- 気管挿管
- 気管切開
- 非侵襲性陽圧換気(NPPV)
- 目的
- 人工呼吸器からの離脱(ウィーニング)
- 在宅酸素療法(HOT)とは
- 人工呼吸器と酸素療法の違い
- まとめ
人工呼吸器ってどんなもの?
患者さん自身の呼吸(自発呼吸)では、「酸素(paO₂)や二酸化炭素(PsCO₂)が正常範囲に維持できない場合」に適応されます。
このような呼吸機能に問題を抱えている患者さんに対して、外部からの補助で呼吸を管理する装置の総称です。
どんな人が適応になるの?
「酸素や二酸化炭素が正常範囲に維持できない場合」とは、要は呼吸不全の状態です。
呼吸器疾患を始め、術後などあらゆる呼吸不全が起こりうる場面で適応されます。
どんな経路があるの?
大きく分けると
①気管挿管(口から気管に通す方法)
②気管切開(気管を切開して、喉から気管に通す方法)
③非侵襲的陽圧換気:NPPV(マスクによる侵襲のない方法)
の3つがあります。
①と②は合わせて侵襲的陽圧換気:IPPVとも言います。
気管挿管
緊急時に行われる場合が多く、手術時などに用いられたりします。
迅速で確実に気道を確保できる方法です。
ただし、口から気管に送り込むため、抜去時の事故や肺炎のリスクがあります。
そのため長期間実施する場合は、気管切開が選択されます。
気管切開
2週間を越える長期間になる場合、気管切開が選択されます。
切開といっても、呼吸管理終了後にはその穴を塞ぐことができます。
気管挿管時のリスクがなく、長期間の確実な呼吸管理が必要な場合に適しています。
非侵襲性陽圧換気(NPPV)
先ほどの2つとは違い、マスクによる人工呼吸を言います。
ドラマとかでよく見るので、これが一番人工呼吸器のイメージに近いのではないでしょうか。
非侵襲性とあるように、マスクを装着するだけなので人体への侵襲はありません。
呼吸苦のある人に適応となりますが、マスクであるため不快感があるのがデメリットです。
COPDや心不全(心原性肺水腫)のような症例では、ファーストチョイスとなります。
病態に合わせて人工呼吸(陽圧換気)の種類があり、CPAP(気道内の圧力を常に一定にする)やIPAP(吸気の時にかかる陽圧)、EPAP(=PEEP・呼気時にかかる陽圧)などがあります。
これらを基本とした様々なモードが選択可能で、CPAPモード、Sモード、Tモード、S/Tモード、PCVモードなどがあり適切に呼吸をサポートできます。
目的
①ガス交換能の改善
②排気量の増加
③無気肺の改善・予防
④低酸素血症の改善
人工呼吸器からの離脱(ウィーニング)
人工呼吸器を長期間使うと、呼吸筋を使わない期間が長くなり廃用性の筋力低下が起きたり、自発呼吸が難しくなったりします。
そのため呼吸筋の筋力増強や自発呼吸の再学習を行い、徐々に人工呼吸から離脱していく必要があります。
在宅酸素療法(HOT)とは
先ほどまでの方法は医療施設での呼吸管理の方法となります。
しかし、退院しても呼吸の問題を抱える患者さんはたくさんいます。
特に今まで血中の酸素濃度(SpO₂)の値が低くて、退院できなかった人に対してこのHOTの存在は大きなものとなります。
これがあることで、在宅でも酸素吸入ができるようになり、呼吸の問題を抱えても退院できるようになりました。
HOTの特徴は、「鼻カニューレ」というものを装着して、鼻から酸素を吸入します。
よく施設などで、酸素ボンベと共に鼻にチューブをかけている人を見かけると思いますが、これがHOTです。
人工呼吸器と酸素療法の違い
人工呼吸器と酸素療法は何が違うのでしょうか。
HOTは酸素療法という名前のとおり、単順に高濃度酸素を送るだけです。
それに対して、人工呼吸器は圧力を調整しながら肺に空気を送り込む機械です。なので陽圧換気といいます。
その際、酸素も一緒に送ることができますが、あくまで圧力をかけて呼吸を補うことが中心となります。
まとめ
今回は人工呼吸器についてまとめてみました。
理学療法士は様々な場面で、呼吸の問題を抱える方との出会います。
そのため人工呼吸器とも関わる場面が多くなります。
理学療法士として、人工呼吸器の経路による名称の違いやメリットデメリットを知っておくことは重要です。