リハログ

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はじめまして。yusukeです。柔道整復師/鍼灸師/理学療法士 3つの資格を取得。各種養成校の学生向けに「リハログ」を運営しています。30代一児の父として頑張っています。

【リスク管理】血圧測定の基本まとめ

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リハビリを実施する際、バイタルサインの確認は重要となります。

介入できるかの判断材料にしたり、運動時の負荷量が適切か確認するなど毎日の臨床で必ず測定する場面がでてきます。

 

今回は自身の勉強のために血圧測定の基本をまとめてみます。

 

血圧

「血圧」とは動脈圧のことを言います。

臨床では体表から血管を締め付けることで、この動脈圧を確認します。

この動脈圧の最高値を「収縮期血圧」、最低値を「拡張期血圧」といいます。

 

心臓の収縮期では左心室から血液が拍出されるため一時的に血圧は上がります、それが拡張期では徐々に拍出された血液が減っていき血圧は下がってくることになります。

 

正常血圧は収縮期血圧130未満、拡張期血圧85未満とされています。

 

これが収縮期140以上、拡張期90以上では高血圧と呼ばれます。

(2009年高血圧治療ガイドラインより)

 

学生時代多くの人が勘違いするのが、高血圧の値を超えるとだめだと思い込むことです。

重要なのは日々の血圧の経過を知っておくことと、その安静時の血圧がどの程度リハビリ前・リハビリ中に変動しているかです。

 

全ての人をこの高血圧の数値に当てはめてもあまり意味がありません。

 

ただし、高血圧を呈している場合、動脈系の疾患となるリスクや死亡率が高まるという意味では、高リスク群であるため、内科的にはこの基準も重要になります。

 

血圧を規定する因子

血圧は心拍出量と末梢血管抵抗に影響されます。

式にすれば血圧=「心拍出量×末梢血管抵抗」です。

 

この内、収縮期血圧は「心拍出量」に、拡張期血圧は「末梢血管抵抗」に主として影響されます。

 

血圧の測定法

血圧は基本的には上腕動脈で測定します。

 

方法としては自動血圧計を使った「機械による血圧測定」と水銀血圧計やアネロイド血圧計に代表されるポンプ操作と聴診器を用いた「一般的な血圧測定」があります。

機械では不整脈など脈が不安定なケースでエラーがでやすく、あくまで目安程度になります。

 

正確な測定では、必ず一般的な血圧測定を用います。

 

ただし機械では素早く脈拍も同時に測定できるメリットがあるため、よく用いられています。中には精度の高い機種もあるため、機械も様々な場面で使われています。

 

使用者は、その特徴をしっかり理解して使用する必要があります。

 

使用方法はカフといわれる圧をかけるためのチューブを腕に巻き付けて加圧していきまます。そしてそのカフ圧を徐々に下げていくことで測定できます。

この際、上腕動脈から聞こえてくる、コロトコフ音を聴取し聴こえ始めを収縮期血圧、聴こえなくなったところを拡張期血圧とします。

 

どこまで加圧していけばいいかは、橈骨動脈を予め触診しておき、消失するあたりを目安にします。

 

数値そのものより変動が大事

脈拍数の管理も同様ですが、数値そのものより安静時に比べてどの程度変動しているかが重要です。

 

また日々の経過を確認して、通常どの程度なのか把握しておくことで病態の変化に気づくきっかけになります。

 

ちなみにアンダーソン・土肥の基準では、安静時に収縮期200以上、拡張期120以上では運動を開始せず、運動中に収縮期40以上上昇、拡張期20以上上昇した場合に中止するとされています。

安静時の血圧把握と、運動中の変動の幅を常に管理する必要があります。

 

また、日本リハビリテーション医学会の基準では安静時の収縮期が200以上に加えて「70以下」の場合が追加されています。拡張期は同様に120以上です。

これらでは運動を開始しないとなっています。

運動時に中止する際の変動幅は同じです。

 

虚血性心疾患の運動処方(進行基準)では収縮期30以上上昇または20以上低下しないことが挙げられています。

(厚生省「循環器疾患のリハビリテーションに関する研究」班に基づいた進行基準)

 

運動時の血圧変動

運動時には、静脈還流量増加や交感神経の興奮が起こり、心拍数や心拍出量が増加します。そのため収縮期血圧は増加していきます。

 

それに対して、末梢の組織は多くの酸素を必要とするため、それを運ぶ血液をより流しやすくします。つまり血管は拡張し、血管抵抗は下がります。

なので、拡張期血圧はそれほど増加しないかあるいは少し下がるのが通常です。

 

ATポイントを超えるような負荷でなければ、数分運動を継続していれば拡張期血圧はむしろ下がるケースがあります。

 

この血管拡張に対して、身体は心拍出量を高めて血圧を維持しようとしますが、廃用や脱水、心機能の問題などがあるとそれができません。(あるいは自律神経や内分泌障害などによる血管コントロール能が落ちている場合も血圧維持に影響してきます。)

 

そのため血圧が下がるということが起きてきます。

 

高齢者の高血圧のリスク

臨床では「高血圧症」と診断されている患者さんに多く出会います。

このような場合どのようなリスクがあるのでしょうか。

 

高齢者では、加齢に伴う動脈硬化などにより血圧調整機構や自律神経の機能低下がみられることがあり一般的に「血圧変動」が起こりやすいと言われています。

 

そこに臥床期間が長いケースでは廃用症候群が加わりより変動が大きくなっている場合もあります。

 

高齢者では年齢と日中臥床時間から血圧変動のリスクを理解して、リハビリを進めていかないといけません。

また、体位変換時の起立性低血圧なども転倒リスクにつながるため、心肺の負荷だけでなく転倒にも注意しておきましょう。

 

脈圧と平均血圧とは?

収縮期血圧拡張期血圧の差を「脈圧」と言います。

つまり脈圧=「収縮期血圧拡張期血圧」で計算できます。

「脈圧」とはその名のとおり、脈の触れる強さです。

脈圧の値が大きいければ脈は強く触れ、小さければ弱く触れます。

 

この脈の大きさが大小交互に変動することを「交互脈」といいます。

 

また、脈圧は「平均血圧」の算出時にも使用されます。

 

平均血圧=「拡張期血圧+1/3×脈圧」で計算できます。

これは心拍動1周期中の動脈圧の変動の平均を表しています。

 

おおよその平均血圧を知りたい場合有用になります。 

 

脈拍により大まかな血圧を知る

脈拍は心臓の心拍が末梢に届いたことにより、蝕知できます。

このことを利用して、どの血管で脈を触れていればおおよそどの程度血圧が保たれているか知ることができます。

 

ただし、通常では脈拍を触知できる血管間で差はないため、血圧低下をきたした緊急時での方法になります。

 

総頚動脈で触れるのは60mmHg以上

大腿動脈で触れるのは70mmHg以上

橈骨動脈で触れるのは80mmHg以上

と言われています。

 

つまり橈骨動脈で脈が触れなくなった時点で、80mmHgを下回っている可能性があり、リハビリを開始できない可能性があるということです。また、急にこのような事態に陥った場合は、Drに必ず報告しなければいけません。

 

自動血圧計でエラーが出る場合は必ず、聴診器にて正確な値を測定し直してておきましょう。

 

前負荷と後負荷

心臓と血流の関係を、考えるとき前負荷・後負荷という考え方があります。この負荷は血圧と密接に関係するため知っておく必要があります。

 

静脈から心臓に戻ってくる血液量を「前負荷」といいます。Frank-staringの法則でも有名ですが、戻ってくる静脈量は心臓を引き伸ばす量に比例し、心筋が伸ばされるほど強く収縮できるます。

 

心臓の問題がないのに血圧が下がりやすい場合、あるいは運動時にも血圧が下がる場合には前負荷の問題がないか考える必要があります。

 

前負荷の変化には、脱水などで血液量自体が減っている場合や、筋ポンプ・腹圧低下や血管収縮能の低下により静脈が十分戻ってこない場合、または心臓自体の問題(不整脈や弁、右室機能低下などにより左室に十分血液が送れない)などが関係してきます。

 

心臓の問題がない場合は、廃用による影響が疑う必要があることを知っておくと、理解が深まります。

 

上記に対して、心臓の出口(左心室)から先の抵抗を「後負荷」と言います。前負荷がどれだけ戻ってこれるかなのに対して、後負荷はどれだけ出せるかになります。

 

後負荷は、血圧が高い状態と関係が深くなります。なぜなら、血管の抵抗が高いということは血圧が高い状態を指すからです。

 

これは血管の拡張機能の低下した場合や自律神経や内分泌性による血圧コントロールが低下している場合、そして動脈硬化などによる血管の硬化がある場合、または心臓自体の問題(心筋の肥厚や弁の狭窄)などが関係してきます。

 

後負荷では心臓の問題に加えて、血管自体の問題を疑う必要があります。

 

特に高齢者では上述したように、血管の硬化やコントロールがうまくいっていないケースが多く、高血圧を呈することがよくあります。

 

(自律神経に問題がでてくるケースは、例えばパーキンソン病や糖尿病など)

 

まとめ

今回は血圧測定の基本についてまとめてみました。

血圧の測定では、変動を観察することが重要で、その変動が危険なものかどうかをある程度判断していく必要があります。

 

リハ職には、運動負荷による変動をDrや看護師に報告し、適切な負荷量を設定していくことが求められます。

 

生理学的なことは難しいですが、安全にリハを実施していくため、今後もリスク管理の理解を深めていきます。