リハログ

リハログ

はじめまして。yusukeです。柔道整復師/鍼灸師/理学療法士 3つの資格を取得。各種養成校の学生向けに「リハログ」を運営しています。30代一児の父として頑張っています。

【解剖学・生理学】中枢神経まとめ。

中枢神経とは「脳と脊髄」のことです。

これらの中に「灰白質」と言われる細胞体の塊と「白質」と言われる軸索の塊があり、場所ごとに名称がつけられています。

 

そしてそれらを繋ぐ、上行性、下行性の経路は伝導路と呼ばれ、役割ごとに分類されています。

 

この伝導路の終末は前角細胞や後角細胞(例外はあります)であり、そこから末梢神経に変わります。

 

中枢神経を理解するには、まずそれぞれの部位を整理して、次に伝導路がどう走行して対応する末梢神経に繋がるかを知ることが重要になります。

 

最初は大まかな全体像から説明していきます。

 

 

 

中枢神経の全体像

 

①大脳皮質

大脳基底核

    間脳(視床視床下部

③脳幹(中脳・橋・延髄)

④小脳

⑤脊髄

 

f:id:r154018:20181116101047j:plain

 

これらが全体像となります。

この①~⑥それぞれに枝葉のように覚える項目があるのですが、まずはこれらの位置関係と名称を整理することが重要です。

 

中枢神経の理解が難しく感じる理由の一つに、他の臓器に比べてイメージしにくいという点が考えられます。

そのため、この①~⑥のどの部位の詳細を覚えているのか常に照らし合わせて整理していくことが理解のポイントになってきます。

どこを覚えているのか迷子にならないように常にこの全体像に立ち戻って覚えていきましょう。

 

大脳皮質

これは脳の表面の薄皮のことであり、その表面に灰白質という神経細胞の塊が覆っていて、これを大脳皮質といいます。

 

大脳は重要な部位になりますが、じつは表面の薄皮がもっとも重要になります。

 

内側にも視床大脳基底核といった灰白質の塊があるのですが、内側を構成するのは主に軸索です。

つまり脳は表面の薄皮以外はほとんど通り道である軸索で構成されています。

 

なので稀少な灰白質の部分はすべて重要となります。

その中でも大脳皮質はとても重要な機能を担っているため、しっかり覚える必要があります。

 

ではこの大脳皮質について整理していきます。

 

 【大脳の機能局在】

大脳皮質には機能局在と呼ばれるマップが存在します。

つまり場所ごとに大まかに機能がきまっているのです。

まずはこの機能局在を理解していきます。

 

①一次運動野(中心前回)・・・4野

②一次感覚野(中心後回)・・・3.2.1野

③一次視覚野(鳥距溝)・・・17野

④一次聴覚野(横側頭回)・・・41野、42野

⑤ブローカ言語中枢(運動性言語中枢)・・・三角部

⑥ウェルニッケ言語中枢(感覚性言語中枢)・・・縁上回・角回

 

f:id:r154018:20181116101242j:plain

 

数字で書いているのは、ブロドマンの地図といわれる分類で、こちらの表記もよく使われます。

 

次に、あまり理解の優先度は高くありませんが、これらの他にも名称がついている部位があります。一緒に整理しておきます。

 

①補足運動野・・・6野

②運動前野(二次運動野)・・・6野

③前頭眼野・・・8野

④二次感覚野

⑤二次視覚野

⑥二次聴覚野

 

f:id:r154018:20181116101313j:plain

では、これら以外の空白の場所はどうなるのでしょうか?じつはこれらはすべて「連合野」呼ばれる部位になります。

ここではそれぞれの~野で理解された情報が統合される場所になります。

 

我々が感覚を感じた後、それぞれを総合的に理解して認識します。そのためにそれぞれの感覚がリンクする場所が必要というわけです。

 

この連合野では、高次脳機能(認知・行動・制御・思考・記憶)を司るといわれ、大脳皮質の75%もの面積を占めると言われています。

 

 

運動前野と補足運動野は聞きなれない用語ですが、運動の命令を送る際に一次運動野とともに重要な役割をする部位です。

 

運動前野・・・視覚情報を経験に基づいた熟練運動に変換する部位と言われます。

補足運動野・・・記憶に基づいた連続運動に関与する部位と言われます。

 

ここまでは「脳の機能」についての名称を整理してきました。

 

次はややこしいのですが、解剖学的な「脳の形」に付けられた名称を整理します。これも一緒に覚えておかなければいけません。

 

【大脳の葉】

前頭葉

頭頂葉

後頭葉

④側頭葉

f:id:r154018:20181116101349j:plain

また、脳の凹凸を脳溝と脳回といいますが、これらにも名称がついています。

 

【脳溝・脳回】

①中心構(ローランド構)

②外側構(シルビウス溝)

③頭頂後頭溝

④上前頭溝

⑤下前頭溝

※上前頭溝、中前頭溝、下前頭溝

⑥上側頭溝

⑦下側頭溝

※上側頭溝、中側頭溝、下側頭溝

⑧三角部

⑨縁上回

⑩角回

【図】

 

この内、①②③は脳の位置関係を理解するためによく使われるため知っておく必要があります。

また、⑨⑩は疾患の理解のために重要となってきます。

 

【メモ】

左縁上回の障害→観念運動失行

左角回の障害→観念失行、Gerstman症候群、失読、失書

 

これらの大脳皮質の主要な部位を覚えたら、次は血管の分布を覚えておく必要があります。

大脳皮質の理解で重要なのは、先ほどの機能局在(~野)、形の名称(~葉・脳溝、脳回)、そしてこの血管分布図の三つを重ねてイメージできるようになることです。

 

これができるようになると、大脳皮質の全体像がわかるだけでなく、脳卒中の際の損傷部位と症状の関連を理解できるようになります。

なので臨床的にも非常に重要な知識です。

 

脳の血管分布を知るにはまずウィリスの動脈輪を理解しましょう。

 

 【ウィリスの動脈輪】

①内頚動脈

②前大脳動脈

③中大脳動脈

④椎骨動脈

⑤脳底動脈

⑥後大脳動脈

⑦前交通動脈

⑧後交通動脈

【図】

 

そしてこの内、もっとも末端になるのが前大脳動脈、中大脳動脈、後大脳動脈です。ここから皮質枝といわれる細い枝が大脳皮質の表面まで分布して、大脳皮質の神経細胞を栄養しています。

 

つまりこの血液供給が途絶えると脳細胞は死んでしまいます。中枢神経の神経細胞は末梢神経と違い再生できないので一度死ぬと元に戻りません。

 

では具体的に、この三つの大動脈がどのように分布しているのでしょうか。

それぞれの分布領域は以下となります。

 

 【大脳皮質の血管分布】

 

これで大脳皮質についての知識が整理できてきたでしょうか?

 

①機能局在(~野)、②形の名称(~葉)、③そしてこの血管分布図の3つの図を重ねて大脳皮質のイメージができるようになりましょう。

この3つを関連して理解できれば、どの血管が障害されれば、どの部位が障害されるかわかると思います。

 

それがそのまま脳卒中の時には症状として現れます。

 

【メモ】

じつは中大脳動脈、後大脳動脈は大脳皮質だけでなく、脳の内側にある構造にも枝を伸ばしています。これらには名称がついているので、整理しておきます。

中大脳動脈の枝・・・レンズ核線条体動脈

後大脳動脈の枝・・・視床穿通動脈、視床膝状体動脈

 

ちなみに大脳皮質への枝は、特に名前のついていない名も無き枝となりますがこれらと同列に重要なものとなります。

 

また、脳内側にいく枝を「穿通枝」、脳の表面である大脳皮質にいく枝を「皮質枝」と表現したりします。

 

まず脳室を理解する

ここまでは大脳皮質について整理してきました。

 

次は脳・脊髄の位置関係を整理していきます。

 

中枢神経の構造は立体的で、大脳皮質以外は位置関係の理解が難しくなります。

というのも上下だけでなく前後左右の位置関係を理解していく必要があるからです。

 

これをどう整理していくかというと、脳室の位置関係をまずしっかり理解することが重要です。

 

なぜ脳室かというと、脳画像(MRI、CT)で位置関係を知る際に明瞭に把握できる脳室を軸に考えていく事が多いからです。

 

まず脳室を理解して、その付近にどのような構造があるのか知っておきましょう。

 

では脳室の全体像はどのようなものでしょうか「。

 

①側脳室(室間溝:モンロー孔)

②第3脳室

③中脳水道

④第4脳室(外側孔:ルシュカ孔、正中孔:マジャンディ孔)

⑤中心管

f:id:r154018:20181116101822j:plain

 

ではこれらが最初に示した中枢神経の目次とどのようにリンクしているかまとめてみます。

 

①側脳室   →大脳(終脳)

②第3脳室  →間脳(視床視床下部)の間

③中脳水道  →中脳

④第4脳室  →前方は橋・延髄、後方は小脳に囲まれる

⑤中心管   →脊髄

 

 

 

だいたいこのような位置関係でリンクしています。

なので脳画像でそれぞれのレベルでスライス撮影した時に、当然これらの脳室も一緒に写ることになります。

 

ちなみにこれら脳室系は脳脊髄液を循環する空間となるのですが、それについては今回は割愛させて頂きます。

 

 

間脳と大脳基底核

ではまず大脳の内部構造で最も重要であり、深く理解する必要のある「間脳」と「大脳基底核」について理解を進めていきます。

 

間脳とは「視床」と「視床下部」のことで、上下の位置関係としては視床の下に視床下部がぶら下がってるような形になります。

 

この視床大脳基底核は同じ高さのレベルに存在します。

 

【図】

脳画像としては第三脳室と側脳室の下の方が一緒に写ることになります。

 

では大脳基底核とはなんでしょうか。

これはいくつかの構造物をまとめた総称のことで、まず大脳基底核の内訳を覚えなければいけません。

 

これは語呂合わせで覚えてしまいましょう。

今回は一例を紹介しておきます。

 

一つ目は「ひかったレンズ日々洗浄」です。

ひかっ ・・・被殻

た  ・・・淡蒼球

レンズ・・・レンズ核

日  ・・・被殻

々  ・・・尾状核

洗浄 ・・・線条体

 

レンズ核」は被殻淡蒼球の総称、「線条体」は被殻尾状核の総称であるためこれらだけで一つの語呂が作られています。

 

ではそれ以外の構造物を覚える語呂ももう一つ追加します。

二つ目は「自然にへ~こく」です。プッって感じです。

 

自・・・視床下核

然・・・前障

へ~・・・偏桃体

こく・・・黒質

 

理学療法士の国家試験では黒質は含まないとして出題されるため注意が必要です。しかし、解剖学の成書では黒質を含むとされているため、今回は一緒に覚えましょう。

 

これで視床大脳基底核を知ることができました。

 

ではそれぞれどんな役割をするのでしょうか。

おおまかですが大脳基底核は主に「運動の調節(錐体外路と関連して)」、視床は「ほぼすべての感覚の中継点」としてとても重要な構造だとイメージしてください。

 

そしてこれらにわざわざ名前がついているのは、ほとんどが軸索で占められる大脳の内側において、細胞体の塊(灰白質)として存在する場所だからです。

 

大脳で灰白質と言えば、大脳皮質でしたがじつは内部にもこれら重要な灰白質が存在するのです。

 

これで視床大脳基底核の存在を少し認識できたのではないでしょうか。

 

では次にそれぞれの位置関係を見てみましょう。

まず脳画像でよくみるスライスで位置関係を整理します。

 

尾状核

淡蒼球

被殻

視床

前障

⑥内包

 

【図】

 

第三脳室を挟むように視床があり、その外側にレンズ核被殻淡蒼球)があるのが理解できると思います。

その間を通る軸索の束を内包と言います。

 

この内包は後に伝導路の理解で重要となります。というのも錐体路といわれる下行性の伝導路のうち主要な部分になるからです。

 

なぜ主要かというと、その位置関係から脳卒中により障害されやすい場所になるためです。脳画像を読む際にもここに脳の出血が広がっていないか知ることは麻痺の程度を予測する上でとても重要になります。

 

このレベルの位置関係をしっかりしっておくことは脳の理解で要になってくるところです。

では立体的な図で位置関係をイメージしてみましょう。

【図】

 

第3脳室を取り囲むように、外側に視床がありそのさらに外側に大脳基底核があるのがわかると思います。

 

そしてこの構造物の外側を大脳が取り囲み、下方では脳幹に繋がっていくのも理解できると思います。

また脳室系で言うと第3脳室から中脳水道、第4脳室につながってきます。

 

ではここでもう一つ追加で構造物を覚えておきましょう。

大脳基底核の外側はたしかに大脳が取り囲むのですが、その前にもう一つ取り囲む構造物が存在するのです。

 

それが「大脳辺縁系」と言われる場所になります。

 

大脳辺縁系

大脳基底核は主に「運動の調節(錐体外路と関連して)」、視床は「ほぼすべての感覚の中継点」としてとても重要な構造です。

では大脳辺縁系とはなにかというと、記憶と情動をコントロールしている部分と言われています。

この辺縁系により起こった原始的な感情(快不快や好き嫌い、怒りと恐怖、攻撃と逃避など)を前頭葉が理性的に抑制することで人間は理性を保っています。

 

この感情の元が大脳辺縁系であると理解しましょう。

 

では話を戻すのですが、これをなぜ今話すかというと位置関係的に大脳基底核の外側に存在するからです。

そして大脳辺縁系大脳基底核と同じように構造物の総称を表す言葉です。

 

その内訳をまずは知っておきましょう。

今回も語呂を一例紹介しておきます。

 

1つ目は「海で弓子の乳みて退場かい?」です。

海・・・海馬

弓子・・・脳弓

乳・・・乳頭体

みて・・・視床前核

退場・・・帯状回

かい?・・・海馬傍回

 

またもや二つにわけて語呂をつくるのはこの一連の構造物はパペッツ回路と言われるためです。パペッツ回路は情動回路として有名で、最近では短期記憶にも関わっていることがわかっています。

 

では残りの構造物も一緒に覚えてしまいます。

2つ目の語呂は「変態漁師中島」です。

 

変態・・・偏桃体

漁・・・梁下野

師・・・視床下部、歯状回

中・・・中隔核

島・・・島皮質

 

これで大脳辺縁系の概要が理解できたと思います。

では大脳基底核との位置関係を図でみてみましょう。

 

帯状回

②歯状回

③脳弓

④偏桃体

⑤乳頭体

視床前核

⑦海馬傍回

 

【図】パペッツ回路をかいてるやつ

【図】基底核との位置関係を示しているもの

 

これで第3脳室を中心として外側に広がる視床大脳基底核大脳辺縁系が整理できてきたでしょうか?

この高さの位置関係は脳画像を見る上で非常に重要になります。

理解しておきましょう。

 

脳幹

次は脳幹(中脳・橋・延髄)のそれぞれの主要な部位を理解していきます。

 

【中脳】

中脳の主要な部位は以下となります。

①中脳水道

②中脳網様体

赤核

黒質

⑤四丘

⑥大脳脚

 

【図】

 

この内、大脳脚は中脳の前面の軸索の塊を指し、内包を通る軸索が繋がってくるところとして重要です。

 

【橋】

①第4脳室

②中小脳脚

③橋背部(橋被蓋)

④橋腹部(橋底部)

 

【延髄】

<前面>

①オリーブ核

②錐体

③延髄網様体

<後面>

①薄束

②楔状束

③内側毛帯

 

ここは大脳脚からの軸索が繋がる錐体があり、ここで錐体交叉します。

 

また後方では後索(薄束・楔状束)から上行性に上がってきた軸索が交叉する毛帯交叉があり、構造上有名な場所が多くあります。

 

【小脳】

①第4脳室

②小脳半球

③虫部

⑤片葉

⑥小脳扁桃

⑦小脳核(栓状核、歯状核、室頂核、球状核)

 

大脳辺縁系の歯状回と小脳の歯状核は混同しやすいので注意。

 

脳神経の中枢

【延髄】

「ジュンコの応援団席」

【橋】

呼吸調節中枢

排尿調節中枢

視床下部

それ以外

 

脊髄

前角、側角、後角

前索、側索、後索

 

伝導路

ここまでで中枢神経の主な構造物は整理できたと思います。

これらを上下に繋ぎ、役割ごとに分類したのが伝導路です。

 

伝導路は主に上行路(感覚)、下行路(運動)に分けられます。

 

以下に全体をまとめてみます。