【解剖学・生理学】中枢神経まとめ 脳が苦手な学生さんにおすすめの覚え方
中枢神経とは「脳と脊髄」のことです。
これらの中に「灰白質」と言われる細胞体の塊と「白質」と言われる軸索の塊があり、場所ごとに名称がつけられています。
そしてそれらを繋ぐ、上行性、下行性の経路は伝導路と呼ばれ、
役割ごとに分類されています。
この伝導路の終末は前角細胞や後角細胞(例外あり)であり、
そこから末梢神経に変わります。
中枢神経を理解するには、まずそれぞれの部位を整理して、次に「伝導路がどう走行して対応する末梢神経に繋がるか」を知ることが重要になります。
最初は大まかな全体像から説明していきます。
中枢神経の全体像
①大脳皮質
③脳幹(中脳・橋・延髄)
④小脳
⑤脊髄
これらが中枢神経の「全体像」となります。
この①~⑥それぞれに枝葉のように覚える項目があるのですが、まずはこれらの
位置関係と名称を整理することが重要です。
中枢神経の理解が難しく感じる理由の一つに、
他の臓器に比べてイメージしにくいという点が考えられます。
そのため、「現在この①~⑥のどの部位の詳細を覚えているのか」を
常に全体像(目次)に照らし合わせて整理していくことが
理解のポイントになってきます。
どこを覚えているのか迷子にならないように
常にこの全体像に立ち戻って覚えていきましょう。
大脳皮質
大脳皮質は脳の表面の薄皮のことであり、その表面は灰白質という神経細胞体の塊
が構成しています。
これを「大脳皮質」といいます。
「大脳」は重要な部位になりますが、じつは表面の薄皮が最も重要なのです。
脳深部にも視床や大脳基底核といった灰白質の塊があるのですが、それ以外の脳内部の空を構成するのは主に軸索です。
この部分は「大脳髄質」と呼ばれます。(外側:大脳皮質 内側:大脳髄質)
つまり脳は表面の薄皮以外はほとんど通り道である軸索で構成されています。
なので稀少な灰白質の部分はすべて重要となります。
その中でも大脳皮質は「とても重要な機能」を担っているため、しっかり覚える必要があります。
ではこの大脳皮質について整理していきます。
【脳溝・脳回】
「大脳皮質」には皺があり、凹は脳溝、凸は脳回と呼ばれます。
「大脳皮質」ではこれらのランドマークに部位を整理整理しているで、
まずはこれらを理解することが重要です。
①中心溝
(ローランド溝)
②外側溝
(シルビウス裂)
③頭頂後頭溝
④鳥距溝
④上前頭溝⑤下前頭溝
※上前頭回、中前頭回、下前頭回
⑥上側頭溝⑦下側頭溝
※上側頭回、中側頭回、下側頭回
⑧三角部
⑨縁上回
⑩角回
この内、①②③は脳の位置関係を理解するためによく使われるため知っておく必要があります。
また、⑨⑩は疾患の理解のために重要となってきます。
【大脳の機能局在】
大脳皮質には機能局在と呼ばれるマップが存在します。
つまり場所ごとに大まかに機能がきまっているのです。
まずはこの機能局在を理解していきます。
①一次運動野(中心前回)・・・4野
②一次感覚野(中心後回)・・・3.2.1野
③一次視覚野(鳥距溝)・・・17野
④一次聴覚野(横側頭回)・・・41野、42野
⑤ブローカ言語中枢(運動性言語中枢)・・・三角部
⑥ウェルニッケ言語中枢(感覚性言語中枢)・・・縁上回・角回
数字で記載されているのは、「ブロドマンの脳地図」といわれる分類で、こちらの表記もよく使われます。
次に、あまり理解の優先度は高くありませんが、これらの他にも名称がついている部位があります。一緒に整理しておきます。
①補足運動野・・・4野
②運動前野(二次運動野)・・・6野
③前頭眼野・・・8野
④二次感覚野
⑤二次視覚野
⑥二次聴覚野
運動前野と補足運動野は聞きなれない用語ですが、運動の命令を送る際に一次運動野とともに重要な役割をする部位です。
運動前野・・・視覚情報を経験に基づいた熟練運動に変換する部位と言われます。
補足運動野・・・記憶に基づいた連続運動に関与する部位と言われます。
では、上記の「脳機能局在」以外の空白の場所はどうなるのでしょうか?じつはこれらはすべて「連合野」呼ばれる部位になります。
ここではそれぞれの~野で理解された情報が統合される場所になります。
我々が感覚を感じた後、それぞれを総合的に理解して認識します。そのためにそれぞれの感覚がリンクする場所が必要というわけです。
この連合野では、高次脳機能(認知・行動・制御・思考・記憶)を司るといわれ、大脳皮質の75%もの面積を占めると言われています。
ここまでは「脳の機能」についての名称を整理してきました。
次は解剖学的に脳の部位を整理した「脳葉」について整理します。
これもよく使われる脳の分類で一緒に覚えておかなければいけません。
【脳葉】
①前頭葉
②頭頂葉
③後頭葉
④側頭葉
これらの大脳皮質の主要な部位を覚えたら、
次は血管の分布を覚えておく必要があります。
大脳皮質の理解で重要なのは、
「脳機能局在」「解剖学的な部位名称(~葉・脳溝、脳回)」「脳血管分布領域」
の三つを重ねてイメージできるようになることです。
これができるようになると、大脳皮質の全体像がわかるだけでなく、
脳の疾患を理解する時に損傷部位と症状の関連を想像できるようになります。
なので臨床的にも非常に重要な知識です。
脳の血管分布を知るにはまず「ウィリスの動脈輪」を理解しましょう。
【ウィリスの動脈輪】
①内頚動脈
②前大脳動脈
③中大脳動脈
④椎骨動脈
⑤脳底動脈
⑥後大脳動脈
⑦前交通動脈
⑧後交通動脈
この内最も重要となるのが前大脳動脈、中大脳動脈、後大脳動脈です。
主にこの3つの大血管が脳を栄養します。
この3つの大脳動脈から皮質枝といわれる細い枝が大脳皮質の表面まで分布して、大脳皮質の神経細胞を栄養しています。
つまりこの血液供給が途絶えると脳細胞は死んでしまいます。中枢神経の神経細胞は末梢神経と違い再生できないので一度死ぬと元に戻りません。
では具体的に、この3つの大脳動脈がどのように分布しているのでしょうか。
それぞれの分布領域は以下となります。
図:大脳皮質の血管分布
これで大脳皮質についての知識が整理できてきたでしょうか?
「脳機能局在」「解剖学的な部位名称(~葉・脳溝、脳回)」「脳血管分布領域」
の3つの図を重ねて大脳皮質のイメージができるようになりましょう。
この3つを関連して理解できれば、どの血管が障害されれば、どの部位が障害されるかわかると思います。
それがそのまま脳の疾患の時には症状として現れます。
【大脳動脈の重要な枝】
補足なのですが、上記の大脳動脈からの枝で重要なものがありここで
一緒に覚えておきましょう。
これらはこの後に取り上げる
有名なので「ウィリスの動脈輪」と一緒におさえておきましょう。
ちなみに大脳皮質への枝は、特に「名前のついていない名も無き枝」となりますが
これらと同列に重要なものとなります。
また、脳深部にいく枝を「穿通枝」、脳の表面である大脳皮質にいく枝を「皮質枝」
と呼びます。
ここまでは大脳皮質について説明してきました。
「大脳皮質」は脳の表面でその内部は「大脳髄質」と呼ばれます。
先程お話したように、
大脳髄質は軸索の塊(白質)
です。
大脳髄質のポイントはこの軸索の流れる方向を覚えることです。
それが連合線維、交連線維、投射線維です。
「大脳髄質」ではここをしっかり押さえておきましょう。
脳室の理解
ここまでは「大脳(大脳皮質・大脳髄質)」について整理してきました。
次は中枢神経の位置関係を整理していきます。
中枢神経の構造は立体的で、位置関係の理解が難しくなります。
というのも上下だけでなく前後左右の位置関係を理解していく必要があるからです。
これをどう整理していくかというと、
まず脳室を理解することがお勧めです。
なぜ脳室かというと、脳画像(MRI、CT)で位置関係を知る際に脳室をランドマークにに周囲の構造物を把握するため、脳画像の理解でも役に立ち二度おいしいからです。
まず脳室を理解して、その付近にどのような構造があるのか知っておきましょう。
では脳室の全体像はどのようなものでしょうか。
【脳室系】
①側脳室(室間溝:モンロー孔)
②第3脳室
③中脳水道
④第4脳室(外側孔:ルシュカ孔、正中孔:マジャンディ孔)
⑤中心管
ではこれらが最初に示した中枢神経の全体像(目次)
とどのようにリンクしているかまとめてみます。
①側脳室 →大脳(終脳)
③中脳水道 →中脳
④第4脳室 →前方は橋・延髄、後方は小脳に囲まれる
⑤中心管 →脊髄
だいたいこのような位置関係でリンクしています。
なので脳画像でそれぞれのレベルでスライス撮影した時に、
当然これらの脳室も一緒に写ることになります。
【脳脊髄液の産生/吸収】
ちなみにこれら脳室系は脳脊髄液を循環する空間となります。
脳脊髄液の産生/吸収についてもここで一緒に覚えておきましょう。
間脳と大脳基底核
ではまず大脳の深部の構造で重要な構造である
「間脳」と「大脳基底核」について理解を進めていきます。
上下の位置関係としては視床の下に視床下部がぶら下がってるような形になります。
【大脳基底核】
では大脳基底核とはなんでしょうか。
これはいくつかの構造物をまとめた総称のことで、
まず大脳基底核の内訳を覚えなければいけません。
これは語呂合わせで覚えてしまいましょう。
今回は一例を紹介しておきます。
「ひかったレンズ日々洗浄」
ひかっ ・・・被殻
た ・・・淡蒼球
レンズ・・・レンズ核
日 ・・・被殻
々 ・・・尾状核
洗浄 ・・・線条体
「レンズ核」は被殻+淡蒼球の総称、「線条体」は被殻+尾状核の総称であるため
これらだけで一つの語呂が作られています。
国家試験ではこれらも問われるため一緒に覚えておく必要があります。
これも語呂合わせを紹介しておきます。
「自然にへ~こく」
自・・・視床下核
然・・・前障
に
へ~・・・偏桃体
こく・・・黒質
※理学療法士の国家試験では黒質は含まないとして出題されるため注意が必要です。
(黒質はあくまで中脳の一部として出題される傾向あり)
しかし、解剖学の成書では黒質を含むとされているため、今回は一緒に覚えましょう。
イメージは朝洗面所で「光ったレンズを日々洗浄」しながら「自然にへ~こく」。
プッって感じです。
【間脳】
では次は間脳について説明していきます。
間脳は先ほど説明したように「視床」と「視床下部」の総称です。
ざっくり説明すると
視床はほとんどの感覚の伝導路を中継する「感覚」と関わりの深い部位
視床下部は「自律神経の最高中枢」と言われるとともに、
下垂体とつながり「内分泌(ホルモン)」とも関わりの深い部位で
神経と内分泌による様々な調節を行います。
視床について以下のスライドで説明しておきます。
ではそれぞれどんな役割をするのでしょうか。
おおまかですが
視床は「ほとんどの感覚の中継点」
としてとても重要な構造だとイメージしてください。
そしてこれらにわざわざ名前がついているのは、
ほとんどが軸索で占められる大脳の内側において、
大脳で灰白質(神経細胞体)と言えば、大脳皮質でしたがじつは深部にもこれら重要な灰白質(神経細胞体)が存在するのです。
これで視床、大脳基底核の存在を少し認識できたのではないでしょうか。
ではここでもう一つ追加で構造物を覚えておきましょう。
大脳基底核の外側はたしかに大脳が取り囲むのですが、その前にもう一つ取り囲む構造物が存在するのです。
それが「大脳辺縁系」と言われる場所になります。
大脳辺縁系
「大脳辺縁系」は情動・本能行動・記憶などに関わる部位です。
この大脳辺縁系により起こった原始的な感情(快不快や好き嫌い、怒りと恐怖、攻撃と逃避など)を前頭葉が理性的に抑制することで人間は理性を保っています。
この感情の元が大脳辺縁系であると理解しましょう。
では話を戻すのですが、これをなぜ今話すかというと位置関係的に大脳基底核の外側に存在するからです。
そして大脳辺縁系も大脳基底核と同じように構造物の総称を表す言葉です。
その内訳をまずは知っておきましょう。
今回も語呂を一例紹介しておきます。
「海で弓子の乳みて退場かい?」
海・・・海馬
で
弓子・・・脳弓
の
乳・・・乳頭体
みて・・・視床前核
退場・・・帯状回
かい?・・・海馬傍回
大脳辺縁系ではパペッツ(papez)回路が有名でこの語呂合わせはパペッツ回路を覚えるためのもので。
パペッツ回路は情動回路として有名で、最近では短期記憶にも関わっていることがわかっています。
大脳辺縁系ではパペッツ回路以外の構造物が存在します。残りの構造物も一緒に覚えてしまいます。
国家試験ではこれらも問われるため一緒に覚えておく必要があります。
これも語呂合わせを紹介しておきます。
「変態漁師中島」
変態・・・偏桃体
漁・・・梁下野
師・・・視床下部、歯状回
中・・・中隔核
島・・・島皮質
これで第3脳室を中心として外側に広がる
視床、大脳基底核、大脳辺縁系の位置関係が整理できてきたでしょうか?
この位置関係は脳画像を見る上で非常に重要になります。
理解しておきましょう。
脳幹
次は脳幹(中脳・橋・延髄)のそれぞれの主要な部位を理解していきます。
【中脳】
中脳の主要な部位は以下となります。
①中脳水道
②中脳網様体
③赤核
④黒質
⑤四丘
⑥大脳脚
この内、大脳脚は中脳の前面の軸索の塊を指し、内包を通る軸索が繋がってくるところとして重要です。
【橋】
①第4脳室
②中小脳脚
③橋背部(橋被蓋)
④橋腹部(橋底部)
【延髄】
<前面>
①オリーブ核
②錐体
③延髄網様体
<後面>
①薄束
②楔状束
③内側毛帯
ここは大脳脚からの軸索が繋がる錐体があり、ここで錐体交叉します。
また後方では後索(薄束・楔状束)から上行性に上がってきた軸索が交叉する毛帯交叉があり、構造上有名な場所が多くあります。
【小脳】
①第4脳室
②小脳半球
③虫部
⑤片葉
⑥小脳扁桃
⑦小脳核(栓状核、歯状核、室頂核、球状核)
※大脳辺縁系の歯状回と小脳の歯状核は混同しやすいので注意。
脳の機能中枢
【延髄】
「ジュンコの応援団席」
【橋】
呼吸調節中枢
排尿調節中枢
【視床下部】
それ以外
脊髄
前角、側角、後角
前索、側索、後索
伝導路
ここまでで中枢神経の主な構造物は整理できたと思います。
これらを上下に繋ぎ、役割ごとに分類したのが伝導路です。
伝導路は主に上行路(感覚)、下行路(運動)に分けられます。
以下に全体をまとめてみます。