高齢者4大骨折とは?
「高齢者に起きやすい骨折」をまとめて高齢者4大骨折といいます。
理学療法士、柔道整復師ともに臨床で出会うことが多い骨折であり、国家試験にも頻出です。主に転倒に関わる骨折が多いと思います。
高齢者は転倒された際どのような骨折となるのでしょうか?以下にまとめてみます。
高齢者4大骨折とは
4大というぐらいなので4つあります。一般的に以下の骨折を指します。
①橈骨遠位端部骨折
②上腕骨近位端部骨折
③大腿骨頚部内側骨折
④脊椎椎体圧迫骨折
今日はこれらについて、それぞれまとめてみます。
①橈骨遠位端部骨折
橈骨遠位端骨折とは橈骨の遠位端、つまり手関節またはその上で骨折することをいいます。これが多いのは高齢者の方が転倒しやすいという特徴があるためです。まず分類から紹介します。
(分類)
①遠位端部骨折(関節包外骨折)…1)伸展型骨折(Colles骨折)
2)曲型骨折(Smith骨折)
②辺縁部骨折(関節包内骨折)……3)Barton骨折(掌側Barton、背側Barton)
4)Chauffeur骨折(自動車運転手骨折)
関節包の中で骨折する場合と、関節包の外で骨折する場合で分類されています。
このうち一番多いものは、Colles骨折です。以下にColles骨折について簡単にまとめてみます。
【Colles骨折】
転倒した際に手掌を床面や地面につく時に、橈骨末端に受ける長軸圧と手関節の背屈強制によって起こる骨折です。レントゲン上の特徴としては、橈骨遠位端から1~3cmのところで掌側から斜め背側に骨折線が走ります。
この際最も特徴的なことは、遠位骨片は近位骨片より背側に転位するということです。(これをフォーク背状変形またはフォーク状変形といいます。)レントゲン画像での鑑別に重要です。理学療法士ではこのレントゲン画像からコーレス骨折を判別する問題が国家試験で出題されています。
また、小児では上腕骨顆上骨折といって肘関節の上で折れることが多いのに対して、高齢者ではこのコーレス骨折のように手関節やその上で折れるか、上腕骨外科頸骨折のように肩関節かその下で折れることが多いのが特徴です。
(治療法)
治療法としては、徒手整復後、ギブス包帯あるいは副子などの外固定が行われます。しかし、整復が不良な場合は、手関節の背屈と前腕の回外の可動域制限を残す事があります。
また高齢者に多い背景から、骨粗鬆症を基盤としていることが多いため、完全整復は困難なことが多いです。
②上腕骨近位端部骨折
上腕骨近位端部骨折とは上腕の近位端、つまり肩関節またはそのすぐ下で骨折することをいいます。これも高齢者の方が転倒しやすいという特徴があるため多くみられます。分類から紹介します。
(分類)
①結節上骨折…
1)骨頭骨折(関節包内骨折)
2)解剖頚骨折(関節包内骨折)
②結節下骨折…
3)外科頚骨折(関節包内骨折)
4)大結節単独骨折(関節包外骨折)
5)小結節単独骨折(関節包外骨折)
6)結節部貫通骨折(関節包外骨折)
この結節上、結節下とは小結節の上縁より骨折線が上か下かで分類されています。
結節上骨折は、腱・靭帯・関節包で強固に包まれているため、骨折は稀です。そのため結節下骨折が多く、その中でも外科頚骨折が多くみられます。
以下に外科頚骨折について簡単にまとめてみます。
【上腕骨外科頚骨折】
転倒の際に地面についた手から腕の長軸方向に力が伝達することにより上腕骨外科頸で骨折します。特に60歳以上の女性で頻度が高いといわれています。
高齢者に多いため骨粗鬆症を基盤となり骨折線が複数となることもあります。
(骨折線による分類)
①肩関節外転位で転倒して起こる「外転型骨折」では、近位骨片は内転、遠位骨片は外転し、骨折部は前内方凸の変形となります。
②肩関節内転位で転倒して起こる「内転型骨折」では、近位骨片は外転・外旋、遠位骨片は内転し、骨折部は前外方凸の変形となります。
このうち多いのは外転型骨折が多いといわれています。
(Neerの分類)
これは以下の4つの部分
①大結節(腱板の機能に関わる)
②小結節(腱板の機能に関わる)
③解剖頚(血行の途絶に関わる)
④外科頚(大胸筋付着部上縁から中枢にある)
が、1cm以上の転位か45°以上の屈曲変形を示した場合の分類です。4つの部分のうち1つが転位した場合を2-part、2つが転位した場合を3-part、3つが転位した場合を4-partといいます。
(治療法)
近位端骨折は転位が少ないものが多く、ほとんどが保存療法で対処できるとされています。転位が少なければ三角巾固定やベルポー固定で早期に運動療法が行えます。しかし転位が大きく不安定な場合は、整復後に4~6週の持続牽引が必要です。また内固定が行われる場合もあります。
教科書ではhanging cast法(懸垂ギプス固定)が有名ですが、現在はあまり行われないそうです。
③大腿骨近位端部骨折(大腿骨頚部内側骨折)
大腿骨頚部骨折は、大腿骨近位端部骨折の中の一つですので、まず分類を紹介します。
(分類)
①骨頭部骨折
②頚部骨折…
1)内側骨折(関節包内骨折)
→a.骨頭下骨折、b.中間部骨折
2)外側骨折(関節包外骨折)
→a.転子間骨折、b.転子貫通骨折
③大転子単独骨折
④小転子単独骨折
最も多いのは頸部内側型骨折です。
内側骨折は、関節包内骨折のため骨癒合が困難なため、人工骨頭置換術がよく選択されます。それに対して外側骨折は、骨癒合が良好なため、CHSやgammanailなど固定術が選択されます。ちなみにダッシュボード損傷として起きやすいのは大腿骨骨頭骨折です。
以下に大腿骨頸部内側骨折について簡単にまとめてみます
【大腿骨頚部内側骨折】
大腿骨頚部骨折の受傷機転は、転倒して直接大転子を強打したり、膝をついて大腿を捻ることです。
平地に立った高さからの転倒でも起きてしまうとされ、これが最も多い原因とされています。これは高齢者では受け身がとれずに大腿骨転子部に直接大きな力が加わるためです。より大腿骨頸部の強度が弱い女性に多く起こります。
(骨折型による分類)
①遠位骨片(大腿骨体側)が内転位に転位する内転型骨折は、骨折部は内反股の状態となる。(頚体角減少)
②遠位骨片(大腿骨体側)が外転位に転位する外転型骨折は、骨折部は外反股の状態となる。(頚体角増加)
このうち外転型では噛合骨折となり歩行できる場合があり注意が必要です。外旋・短縮位となることが多いといわれています。
(Garden分類)
stageⅠ:不完全骨折
stageⅡ:完全骨折(最小転位)…骨片は嵌合し、軽度外反位をとる。軟部組織は連続している。
stageⅢ:完全骨折(転位)…骨頭への血行は保たれる(weitbreche支帯は保たれる)。しかし、この支帯にひっぱられて回転転位する。
stageⅣ:完全骨折(高度転位)…骨頭への血行は途絶する。(weitbreche支帯は断裂)。頚部周囲の支帯がすべて断裂しているために骨頭は回転しない。
(治療法)
治療法は保存療法、固定術、人工骨頭置換術の3つがあります。
ただし保存療法を行う症例は少なく、嵌入骨折のような安定した骨折の場合に限ります。
固定術は外側骨折で行われます。外側骨折では血行もよく骨癒合も良好なため、CHS、gamma locking nail、Ender nail、compression hip screw、multiple pinningなどによる様々な固定術があります。それぞれ長所と欠点があります。
人工骨頭置換術は内側骨折で行われます。これは関節包な骨折であり、骨頭壊死の頻度が高いためです。
④脊椎椎体圧迫骨折
腰を落として尻もちをつくような転倒で生じます。骨粗鬆症が高度の場合、物を持ち上げたりする動作のみでも生じることがあります。
症状としては、腰背部痛、亀背・後円背のような変形がみられます。構造的に胸腰椎移行部に最も圧迫力がかかりやすいために、第12胸椎・第1腰椎に多く発生します。
(治療法)
ベーラー体操が有名です。国家試験にもよく出題されます。
脊柱の前屈は禁忌です。基本的にはコルセットなどの外固定をします。稀ですが脊髄に圧迫のあるものは観血療法の適応となります。
参考:
標準整形外科第12版.医学書院
ここがポイント!整形外科疾患の理学療法 改訂第2版.金原出版
柔道整復学 理論編 改訂第4版.南江堂