リハログ

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はじめまして。yusukeです。柔道整復師/鍼灸師/理学療法士 3つの資格を取得。各種養成校の学生向けに「リハログ」を運営しています。30代一児の父として頑張っています。

臨床実習で必須。今さら聞けない理学療法プロセス(PTプロセス)。

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理学療法プロセス(PTプロセス)は理学療法士の臨床での思考過程をモデルにしたものです。養成校では、この思考の学習にかなりの時間を費やします。

 

僕が柔道整復師鍼灸師の立場から理学療法士を目指したとき一番すごいと思ったことは、この理学療法プロセスを共通認識として全理学療法士が持っていることです。

 

今回はこの理学療法プロセスについてまとめます。

 

理学療法プロセス(PTプロセス)とは

理学療法プロセスとは具体的にどんなものでしょうか?

概要をいうと、まず情報収集をしてそこから仮説を立て、それを検証します。そして、その中から、問題点を見つけて治療を実施し、再評価するという一連の流れをいいます。

 

理学療法に限らず、物事を理論的に考えるときだいたいこのような思考の流れになるのではないでしょうか。

 

以下に具体的な項目をまとめます。

①情報収集

(カルテ・他部門からの情報・医療面接)

②評価

(検査測定・ADLtest・動作観察)

③統合と解釈

④問題点の抽出

⑤目標設定

⑥治療プログラムの立案と実施

⑦再評価(効果判定)

 

多少文献により表現は違いますが、概ねこのような構成であると思います。

 

このうち①と②の間に「仮説」を立てることになります。

その仮説を立証するために評価を実施して、具体的な問題点を挙げていきます。

 

この問題点はICIDHといわれる、機能障害・活動制限・参加制約という三段階に当てはめて考えます。

この3つは、impairment・disability・handycapとも表現され三つ合わせて「IDH」とも言われます。

ただし現在では、この問題点だけでなくICFというモデルにあてはめて「できること」にも目を向けて考えることが主流となっています。

 

理学療法士が関わる障害とは正にこのIDHのことです。

 

障害については以下の記事に書いています。

pthari.hatenablog.com

 

情報収集とは

医療面接・カルテ・他部門からの情報の3つから収集します。

医療面接は養成校でかなり練習します。

 

この情報収集は目標設定とどうつなげるかが大事です。

そのため主訴やdemandsといった患者さんの訴えを聴取し、それを掘り下げて何に困っているのかを聞き出すことがポイントとなります。

なので主訴とdemandsをしっかり聞いておかないと、目標設定ができません。

 

また、ADLについて聴取する時は、現在のADLを確認するだけでなく術前あるいは病前のADLも聴取することも重要です。

入院前の身体状況をもとに目標設定をしないと無理な目標を立ててしまうからです。

できるだけ入院前の生活に近づけるように目標を決めていく必要があります。

 

目標設定については以下の記事に書いています。

pthari.hatenablog.com

 

また、既往歴や疾患名、術式などからリスク管理についても想起しておきます。

 

 医療面接をする時のポイントは、カルテに書いていない情報を優先的に聴取することです。また、現在の話をしているのか以前の話をしているのか時系列をしっかり伝えて聴取することも重要です。

 

家庭での役割や、家の中の移動、外出時の移動などはよく聞いておくと生活をイメージしやすいです。

 

障害像の仮説とは

持ち得る情報が、医療面接・カルテ・他部門の情報のみの時点で考える仮説です。

まず、症状の訴えやADLなどの情報と、疾患・廃用についての医学的知識を合わせて、1次性impairmentと二次性impairmentを予測します。

 

以下の記事も参考にして下さい。

pthari.hatenablog.com

次に聴取した現在のADLと受傷前ADLからdisabilityを予測します。

最後にimpairmet、disabilityの情報をもとに、生活場面や自宅での役割などを考慮してその人の1日の生活をイメージしてhandycapを予測します。

handycapについては医療面接でどのような参加の場面があるか聞いておくことも重要です。

 

「仮説」とは医療面接終了時点でIDHを予測することです。

この仮説により評価の計画が可能となります。

 

統合と解釈とは

 「評価結果」と「障害像の仮説」を比較して、IDH(問題点)を抽出し、そのIDHの関係性を考えることです。

この「IDHの関係性を考えること」というのがポイントです。

 

また目標設定にあった問題点が考えられているかどうかも重要となります。なぜなら、できないことを何でも問題にしてしまったら、すべて問題点になってしまうからです。

例えば歩くことを目標としていない人の問題点として歩行をあげてしまうと、目標とずれた治療をしてしまうことになります。

 

統合と解釈は文献によると以下のような内容になります。わかりやすいので引用します。

①活動制限とその原因(機能障害)の因果関係を解釈

②参加制約を考慮し、活動制限の改善の必要性を解釈

③対象者の示す現象を解釈(高次脳機能障害など)

④障害の予後を解釈

参考:千住秀明:理学療法評価法第3版,神陵文庫.2014.

 

【障害の予後を解釈する】

①活動制限の一つ一つの原因(機能障害)の改善性に着目する。

②改善性の高いもの、改善性の低いもの、判断が難しいものに分ける。

③これらを総合的に捉えることで活動制限の回復限界点を粗大に予測できる。

④さらに自助具や環境などの要素(代償要素)を加え、予後予測を完成させる。

参考:千住秀明:理学療法評価法第3版,神陵文庫.2014.

 

問題点の抽出とは

問題点の抽出とは、統合と解釈で考えたIDHを実際にICIDHやICFモデルにあてはめ患者さんの障害像を「要約」することです。

どうしても「問題点」の抽出なので、マイナス面中心に着目することになるためICIDHでもOKです。

 

しかし、全体の情報をより整理して、その上で問題点をあげたい場合はICFが優れています。現在の主流はICFです。

 

この時問題点としてあげられるものは、運動療法・物理療法・ADLtrainingといった理学療法で解決できる具体的な問題点でなければいけません。

できないことを何でも問題点としてしまうのは誤りです。

 

目標設定とは

長期の目標設定と短期の目標設定があります。

 

長期の目標設定は、患者さんの主訴・demandsと理学療法士のneedから考えます。

理学療法士のneedとは疾患の予後や障害の予後から医学的に考えられたものでなくてはなりません。

患者さんの訴えと理学療法士の医学的考察の折り合いをつけたものを真のneedといい、これが長期目標と深く関わります。

 

短期目標は段階的に到達目標を立てて長期目標に近づくように逆算的に計画したものです。

 

実習ではどう学ぶの?

実習では段階を追ってこの理学療法プロセスを理解していきます。

 

その段階としては、

①1年生では見学実習があり、情報収集を学びます。

②2年生や3年生では評価実習があり、評価までを学びます。

実習地によっては、治療プロぐラムの立案まで経験させてもらえる場合があります。

※評価実習に行く学年は、養成校が3年制か4年制かによって違います。

③最終学年では長期実習があり、理学療法プロセスのすべてを経験します。

 

この経験によって3年間ないし4年間理学療法プロセスを継続的に学ぶことになります。

理学療法士の共通認識はこの経験により成り立っています。

 

まとめ

今回は理学療法プロセスについてまとめてみました。

複雑ですが、思考を整理するにはとてもいい方法だと思います。

大変な実習に臨むうえで少しでも参考になれば幸いです。

 

参考:千住秀明:理学療法評価法第3版,神陵文庫.2014.